151 / 442

June:喰えない相手 1

『……───静粛に』  6月1日。月はじめの最初の登校日は全校集会からスタートする。  司会進行は副会長の仕事ということで、声にテキトーさを滲ませないよう注意を払いつつ、マイクを通して声を届かせる。  1500人程度の収用量を誇る二階席構造のシューボックス型大ホール。大きな大きなシャンデリアと幻想的な天井画、そして深紅の座席に座る衣替えしたての生徒たち。  そのすべてを視界に納められるステージ上の端で、俺は淡々と司会業をこなす。  一挙手一投足見られている緊張感ももう慣れた。  だがしかし、だるい。  ああ、とてつもなくだるいさ。  会長が予定時刻を過ぎてもなかなか連絡を返してくれないから、朝から生徒会寮の部屋のインターホン連打して叩き起こして一緒に登校したら偶然遭遇した生徒会顧問の藤戸氏(徹夜明け)に「とうとう朝チュン?」などと身の毛もよだつ誤解を受け、と朝から散々で。  その上。極めつけに。 「待って待って待って、あ、あれ、もしかして、」 「嘘、なんで……?」 「誰? あの超絶美形はどなた……?」 「なんで、ただの集会にいらっしゃるんだ……?」  いつもの集会の予定なら、各委員が簡単な業務連絡を行い、ダンディな教頭が馬鹿みたいに長い話をし、部活動の表彰がもろもろあって、最後に会長が締めたら終わり、なんだけど。  ワインレッドの暗幕の影から姿を現した人物に、生徒が一瞬沈黙し、そしてざわりと騒ぐ。  梅雨入り前だというのに、余計に頭が痛くなりそうだ。 『……では、お願いします。理事長』  そうだ。  ただの集会になんで学園理事が来るんだ。  

ともだちにシェアしよう!