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生徒に解散を告げたあと真っ直ぐこちらに来た古賀は、マツリから借りた黒いタオルを見てニカッと笑い、「青春だな!」と一人納得していた。
これのどこを見て青春と判断したんだ。下着までぐっしょりで惨めな俺のどこを。
「センセー。リオちゃんの服、どーしましょう。多分ナカまで濡れちゃってる」
「それならさっき藤戸に予備を取りに行かせたぞ。少し時間がかかるかもしれんが、次の授業担当には俺から連絡を入れよう。待てるか?」
「はい。ありがとうございます」
どうでもいいけど、マツリのくちから下着 まで濡れてると聞くと卑猥な意味に取ってしまう。本当にどうでもいいな。
去っていく古賀の背中を見届けてから、そういえば紘野の制服をちょっと濡らしてしまったことを思い出した。
辺りを見回して探すものの、どうにも周りの目が気になって仕方がない。
マツリがイイ感じの立ち位置にいてくれるためガン見からは逃れているが、そんなにちらちら見られても。
身動ぎした、その後ろから。
バサリ、白い布で背中が覆われた。
突然過ぎて変な声が出そうになって必死に飲み込む。
タオルと違って薄いし通気性がある布。少し水を吸って重いが、俺のびしょ濡れブラウスと比べればマシだし、ほのかに温かい。
ザワ、と。飛び込み直前の比じゃない、本日最大の悲鳴。騒音。雑音。
まだ残っていた生徒、ロッカーに居た生徒、悲鳴を聞きつけた生徒の全方位から注目を受けているのが、肌でわかる。
「うっそ……!」
「やっぱりお似合いだよなあ、あの二人」
「あんなにはだけたお姿、初めて見た……!!」
おそるおそる布に触れると、どうやら…制服? みたいだ。しかしここで制服を着てる人間なんて、俺と………あ。
「綾瀬。お前がそいつをどれだけ隠そうが、余計注目されるだけだぞ」
「……まあ、リオちゃん目立つからね。ほっとけないのかな、壱河クンは」
「いいや───…ただ、隠したいなら協力をと、思っただけ」
気まぐれだね、と。マツリが呟く。
引き締まった上半身と胸元で揺れるドッグタグをさらした紘野が普段どおりの表情のため、マツリからその意図を探ろうとしたけれど……どこか複雑そうな横顔からは、なにも読み取れなかった。
その日、マツリやリウを始めとする2-Sと2-Aの人気者を筆頭に激写された水着姿が、写真部で飛ぶように売れたという。
めったに見られない《蒼薇の君》のサービスショットが売上最高額だったらしい。
ただし、タイトルを『彼シャツ』と銘打った写真を始め数種類に関しましては、俺が根こそぎ没収させて頂きました!
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