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 俺の演技的な意味では俺の例外はすでにAではなく王道なのだが、そこで訂正するほど空気が読めなくはないので黙る。  さすが、王道以外でも平気で気のある素振りを見せる会計ならではの台詞だ。実態を知ってる側からすればペラッペラ過ぎて真似できない。 「じゃ、そろそろ時間やべえし、センセーも来たし。お開きねー」  パン、と手を叩き、マツリが整列を促す。  何事もなかったように歩くもの、ちらちらとこちらを振り返るもの、反応は様々。  タイミング良く戻ってきた古賀が生徒へ集合をかける。俺もこんな状態だが並ぶべきか。近くのマツリと連れ立ち、歩を進める。 「マツリ。ピアスを」 「あ。ありがとー」 「すみません、濡らしてしまって……この状態で返却するのはどうかと迷ったのですが、私自身がこの有り様ですので。……何かあれば弁償しますが」 「ピアスなんてどうでもいいよ。それよりダイジョーブ? 寒くない?」 「平気です」 「早く着替えた方がいいよ。リオちゃん以上に、周りが困ってるみたいだから」  ……まあ、多方面からすごく注目を受けていることは分かってる。ネコ系男子からの熱視線は半分以上マツリの責任だけど。  だが、結果的にAが今回のことで目の敵にされることは防げたし。俺も俺で助かったし。  思えば、こうしてマツリに庇われるのは何度目だろう。  Aのときもそう、王道のときもそう。  面倒ごとから上手く遠ざけられてる気がする。  ただ、世渡り上手なこいつがわざわざ俺を庇う理由が、いまいち掴めない。  クラスメートだから? 仕事仲間だから?  なんて。  俺はいつまで鈍感なふりをしていればいいんだろう。 「すみません。いつも、損な役回りをさせて」  そう言うと、マツリにしては珍しく、苦い笑みをこぼした。しかし何事もなかったように、別にいいよと返される。  けれど、何らかの言葉を飲み込んだんだろう。それくらい、日頃ある程度接していれば癖を知らずとも表情で分かる。 (……お前、本当は、俺に何か、言いたいことでもあんじゃねえの)  その問いを飲み込み、マツリの後ろを黙ってついていく。  さすがの俺だって、気付いてはいる。  こいつが俺に対して、クラスメートや仕事仲間という間柄を抜きにした上で、何か、思うところがあるってことは。  しかしどこまで踏み込んでいいのか。  そもそも、踏み込むべきか、気付かないふりをし続けるべきか。  距離をはかりかねている。困ったことに。  何事もなかったように目を瞑って、何事も気づいてないように接する。それが俺にとっての最善策であるうちは、きっとこの距離も縮まりはしない。  

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