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第27話

 湯船に浸かっている間も、ライの愛撫は続いた。   「んっ……、っんぅ……! ふぁっ……、あっ……! ……っ……!」    緩やかな刺激に、希望は甘い吐息が零れる。  それでも赤く色付く胸の突起や戸惑いながらも控えめに主張し続ける雄も、きゅんきゅんと疼く蕾にも、ライが触れることはない。  刺激を求めてつんっ、と生意気に尖る中心には触れずに、ぷっくりと膨らんだ周囲を指の腹で擦る。足の付け根の皮膚の薄いラインをゆっくりなぞる。そして、双丘の谷では固くて熱い欲望を感じていた。  それでも、希望の頭を撫でるライの手は優しく、柔らかく、身体中の力が抜けていく。    湯船から上がっても、希望は頭の奥まで甘く痺れていて、足下が覚束ない。  ライは希望をバスローブで包むと、抱き抱えるようにして寝室へと運んだ。    ふっ、と希望が顔を上げるとライと目が合った。  暗い深緑の目が細められて、希望をじっと見つめている。  互いに見つめ合うと、惹かれあうようにゆっくりと距離が縮まり、唇が重なった。  そのまま、ライは希望をベッドに押し倒す。希望も身を任せて、深い口づけを受け入れた。  キスしながら、ライの手が胸を撫で、バスローブを肌蹴させていく。希望は抵抗せず、ただライの熱い掌を感じて、僅かに身体を震わせた。    禁欲している間、キスさえも唇が触れ合う程度のものだけになってしまっていた。  こんなに深く絡み合う口づけは久しぶりだ。   「んんっ……ふ、んぁっ……! はぁっ……ん……!」    ライと希望の唇が少し離れる。  ライ自身もバスローブに身を包んでいるが、希望がキスしながら引っ張っていたのだろう。乱れて、肌蹴てしまって、厚い胸板と割れた腹筋、鍛え上げられた肉体が晒されている。  なんて綺麗なんだろう、と希望はライを見つめた。    そんな希望を見て、ライは目を細める。  ライが希望の頬を撫でると、希望は甘えるようにすり寄った。  唇や頬、額にキスを繰り返して、身体への愛撫も続ける。    キスしながら触れられることが、心地良く、気持ちよくて暖かい。  このままうっとりと蕩けて抱き締められて眠りたい、と希望の瞼が落ちていく。  けれど、じっくり触れられて、希望の双丘の奥はきゅんきゅんと疼いていた。身体は正直で、腰がぴくぴくと小さく震える。    このまま緩やかな愛撫を続けて欲しい気持ちと、激しく嵐のような快楽で身も心も奪い去ってほしい気持ちで、希望の心は揺れていた。   「ひゃぅっ……!?」    希望がもじもじと腰を揺らしていると、ライは希望の足を大きく開かせて、奥の蕾を撫でた。   「こっちも使わなかった?」 「……っ……!!」    希望は頬を紅く染め、ぎゅうっと唇を結んだ。ライの視線から逃れるように顔を背けている。   「まあ、いいけど」 「あっ! あぁっ!」    とろとろと溢れる先走りを塗りつけるようにして撫で始める。  蕾は徐々に柔らかくなり、ひくひくと指に吸い付いた。求められるままに指を沈めていく。  それだけで、希望の身体が大袈裟に仰け反った。   「あぁっ…あっ……! ぁあんっ……っ……!」 「まだ指だけなのに、どうした?」 「……っ! んっ……んぅっ……! っ……!」    ライが呆れたように笑うと、希望はようやくライを見つめた。唇はぎゅっと結んだまま、頬は赤く染まり、瞳を潤ませる。  自分の指で必死にかき乱しても足りなかったし、満たされなかった。けれど、ライの指はゆっくりと希望の中を探り、ひとつひとつ丁寧に、快楽を呼び起こしていく。    希望はただシーツを掴んで、小さく身体を震わせていた。    久しぶりだからか、じっくりと解され熟れた蕾に、熱い欲望が押し付けられる。  すっかり快楽に呑まれていた希望は、どきり、とした。自分よりも大きく逞しいライの身体がのしかかり、抑え込まれている。  けれど、しっとりと汗ばむ肌の熱さと匂いが懐かしくて、愛おしくて、たまらなかった。    きゅんきゅんと疼く腹の奥に、ずぐり、と楔が打ち込まれた。   「――ッアァッ! んんぅ……っ! ……ぁあっ……!!」    ずっと欲しかったものに貫かれて、身体が悦び震える。目の前がちかちかと白く弾けて、希望は小さく痙攣を繰り返した。  希望の耳元で、ライが息を詰める。そして、はぁっ、と息をついた。   「きっつ……。すげぇ締まる。久しぶりだから忘れちゃった?」    ライは動かずに、希望の中が馴染むのを待った。  貫かれた衝撃で、希望はまだ震えている。   「また形、覚えなきゃな」 「ンンッ……! あっ、んっ……! んぅ……っ!」    ライの吐息に情欲を感じて、希望は腹の奥が疼いた。きゅんきゅんとライを締め付けて、肉壁はびくびくと痙攣し、受け入れた雄を求めて飲み込もうとしていた。    希望の蕾がライの雄をずっぷりと受け入れたところで、ライは奥まで一気に貫く。   「~~――っっ! ――っぁ……!! ……んっ……!」    希望の身体が大きく震えて、白濁をとぷっと溢れさせた。突然の絶頂に、声も出せずに仰け反り、シーツを掴んでびくっ、びくっと痙攣している。   「もうイったの? そんなに我慢してたんだ?」 「んっ……!」    希望は余韻に震えながら、こくこくと頷いた。   「抜いていい、って言っておいただろ? 一回もしなかったのか?」 「っ……! ……し、してな、い……」 「本当は?」    希望は目を逸らして答えたが、ライはじっと見つめている。  ライの瞳が細められて、何もかも暴いてしまうような暗い光がじっとりと希望にまとわりつく。   「……っ……」    じっと見つめられている間も、希望の身体はより激しい快楽を求めている。  一突きされたことで、身体は完全に情欲を目覚めていた。  動いてくれないライの代わりに、希望の腰が揺らめく。  しかしすぐに、ライが希望の細腰をがっしりと掴んで止めてしまった。   「あっ……! ラッ、ライさん……っ!」 「んー?」    ライが首を傾げて微笑む。  希望の縋るような眼差しも、じっと愛おしそうに、楽しそうに眺めていた。  どうしようもなくライを求めながら、必死に自分の身体を弄って、快楽をかき集めようとしていたことはばれたくないと希望の瞳に涙が滲む。  けれど、腹の奥が疼くのを、これ以上止めることはできなかった。   「……っし、した……」 「なに? 聞こえない」 「……っ……したっ! いっぱいした!」    希望はぎゅう、とライの腕を掴んだ。   「いっぱいしたんだぁ? それにしては欲求不満過ぎ」 「だって……! ここまで届かなくて!」    希望は下腹部に触れた。今はライが深く抉り、奥まで満ちている。   「指じゃ届かなくて、なんどもいっぱいしたけど、ここまで欲しくて、欲しくて、でも足りなくて……! いっぱいしたけど、できなかったの!」 「あっそう」    ライが楽しそうに、喉の奥で低く笑う。深い緑の瞳の奥で、暗い光がゆらゆらと誘うように揺れていた。   「言えばよかったのに。手伝ってやるって言っただろ?」 「……だって……っ」 「次はちゃんと言えるよな?」    ライは希望の頭を優しく撫でる。希望は恥ずかしい告白をさせられて取り乱していたが、ライの大きな掌に少しほっとした。   「わかった?」 「う、うんっ……! わかった、わかったからぁ……だから、もぉっ……!」    ぐっぷりと挿し込まれたままの熱が動いてくれなくて、希望は身体を震わせ、潤んだ瞳でライを見つめた。  希望がライの足に腰を絡めて引き寄せようにも、逞しい身体はびくともしない。腕を掴んで、背中に手を回しても、ライはただじっと希望を見つめて微笑んでいる。   「ライさんっ……! あの……っ……も、もう……!」 「なぁに?」    ライが微笑んだまま首を傾げる。  希望は縋るように見つめ、熱い吐息を零した。  どうしたら、してくれるのだろう? と必死に考える。     『次はちゃんと言えるよな?』      先ほどのライの言葉がじんわりと希望の頭を支配した。    僅かに残った理性とじわじわと情欲に侵されていく心の狭間で、希望は震えていた。  はぁっ、はぁっ、と熱っぽい吐息を零し、瞳はとろとろと潤む。  ぷるりと震える唇を意を決したようにぎゅっと結んで、息をついた。   「いっ、いっぱい、したい……っ! いっぱいしてぇ……? ここにいっぱいくださいっ……!」    希望はライを見つめて、下腹部を撫でる。ライの欲を飲み込んで、もっと奥へと求めている。  ライは満足そうに笑みを浮かべて、希望の頬を撫でた。  よしよし、いいこいいこ、と頬を撫でて、キスをする。   「本当に、覚えがいいなぁお前は」    ライはぎゅうっと希望を抱き締める。楔が奥を抉ったが、希望は恍惚と「ああ……」と熱く吐息を零した。  くたり、と希望はライに身を任せる。  ライは希望の頭を優しくゆっくりと撫でながら、耳元で囁いた。   「じゃあ、ご褒美の続きしよっか」    そう言って、ライは愛撫を再開し、ゆっくり動き出す。    自分の欲望を口にすることで、しがらみから解き放たれたかのようだ。  戸惑いや羞恥、理性を投げ捨てた希望は、ああ、ああ、と悦び、ひたすら甘く鳴いた。        ごほうび。    うれしい。

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