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episode5. 誘惑(12)
「分かってます……分かってるんですが……すいません……! 俺、まだまだ修行が全然足りなくて……その」
「言い訳はいいから、早く撮れって」
「違うんです……! このままだと俺……紫月さんのせっかくの演技も……撮るってことも忘れちまいそうで……」
既にカメラを持っていることさえできないわけか、枕元にガクリと手を付いたまま、苦しげに瞳を瞑りながら必死に何かに耐えている。そんな遼二の表情を見上げながら、紫月は陶酔するように瞳を細めた。
そうだ、これが見たかった――
この表情、この仕草。
自身の淫らな演技に翻弄されて戸惑う彼のこの姿を望んでいた。
今、彼は――初めての撮影の――あの時と同じように、自分を目の前に興奮している。欲情に抗えず、それでも必死に耐えている。紫月は得もいわれぬ満足と興奮が渦巻いていく中で、この上ない幸福感に打ちひしがれん心持ちでいた。
突如グイと彼の腰元を両手で掴み、引き寄せて、互いの雄同士を擦り合わせるように自らも腰を浮かせた。案の定、思った通りに彼のソレは硬く興奮していて、厚めのジーンズの上からでもはっきりと分かるくらいだった。
「紫月……さんッ! ダメです……マジで……俺、犯罪者になっちまう……!」
焦って裏返った声も、紫月にとっては堪らない。
「犯罪って……何だよ? 俺を犯 っちまうかも知れねえってこと?」
「……ッ、そ……んなこと……するわけにいきません……! すみません、今日はもう……撮影は……」
「お前――そんなんじゃ、いつまで経っても慣れるどころの話じゃねんじゃね?」
「……そうですけど……でも本当に……これ以上は……」
腰を浮かせ、密着している互いの身体を少しでも離そうと必死になっている。両腕を突っ張らせて、何とか覆い被さらないようにと耐えるその姿が、紫月には堪らないほどゾクゾクとしてならなかった。
「――ほんっと、可愛いのな?」
「……ッ」
「晩熟 で、真面目で、純情で――ってか? こんな男前のくせして……マジ堪んね……」
紫月は再び彼の腰元を勢いよく引き寄せると、後方からジーンズの中へと両手を突っ込み、彼の尻を鷲掴みにした。
「紫月……ッ」
「いいな、それ。呼び捨て、堪んね!」
「え、あ……すいま……せッ!」
「いいって」
尻に滑り込ませた手を徐々に前へと移動させ、硬く張り詰めた雄に触れ――
「すっげ、ガチガチ――」
「……ッあ……、くッ……」
欲情に抗い切れないその嬌声が我慢の限界を告げる引き金だった。ついには覆い被さるまいと必死に耐えていた体勢が崩れ――彼の身体の重みに組み敷かれたのを感じたと同時に、乱暴なまでの勢いで唇が重ね合わされた。
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