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第16話

夢を見ていた。 まだ両親も姉夫婦も生きていて、蓮が小さかった頃。 「ハルちゃん、ハルちゃん」 小さな蓮が僕に手を伸ばす。 僕が手を差し出すと、小さな手が必死に僕の手を握り締める。 「ハルちゃん、ハルちゃん…大好き」 いつも僕を追い掛ける蓮に、姉さんが呆れた顔で 「蓮は本当にハルが大好きね…」 って言って笑っていた。 ずっと続くと思っていた幸せな日々。 「ハルちゃん…ハルちゃん…」 泣きそうな顔で、幼い蓮が僕の名前を呼んでいる。蓮、なんでそんなに悲しそうな声で僕を呼ぶの?大丈夫だよ。僕は、蓮の手を決して離したりしないから…。 「ハル!」 蓮の声に目を覚ますと、泣きそうな顔で蓮が僕の顔を覗き込んでいる。 「れ…ん…?」 昨日、イキすぎて声がガサガサになっているし、身体が鉛のように重い。 「ごめん…ハル。俺、嬉しくて…ハルにむちゃくちゃした」 僕の手を両手で握り締めて、蓮が涙を流している。 「高校生にもなって…何泣いてるんだよ」 小さく笑う僕に、蓮は 「ハルまで…俺の前から消えちゃうんじゃないかって不安だった」 そう呟いて、握り締めている僕の手を蓮の額に当てている。 大切な家族をいっぺんに失った蓮にとって、僕に何か起こる事がこんなに不安になるのだと知った。…とはいえ、今回は蓮が僕をむちゃくちゃに抱いたのが原因なので、少し反省してもらいたい気持ちはある。 「ハル…ごめん。もう、2度とこんな無茶はしない。だから、嫌いにならないでくれ…」 震える蓮の声。 そうしていると、図体はでかいけどまだまだ子供なんだな…って思ってしまう。 「蓮…反省してるか?」 呟いた僕の声に、蓮が顔を上げて頷く。 「じゃあ…今晩はオムライスが食べたい」 全身身体が痛くて、正直、食欲なんか無い。 でも、俺達が喧嘩する度、仲直りするのに作って上げていたものを口にした。 蓮はパァっと明るく笑顔になり 「うん、分かった!ありがとう、ハル」 そう言って僕の額にキスをした。 笑うとまだあどけない蓮の笑顔に、僕も笑顔で返した。

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