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第1話 人形の様な少年
息を殺して‥‥
自分を消す
自分は邪魔な存在だと解っているから‥‥
気配を消して‥‥自分を殺して生きていた
そう人形の様に感情のない置物になろうとした‥‥‥
江口類は…孤独な子供だった
仕事優先の両親は…類を省みなかった…
仕事優先にする両親はまるで最初から子供などいないかの様に‥‥‥
家政婦に任せて我が子の事など感心すら抱かなかった
類は物心着いた頃から…一人だった
子供を放ったらかして、仕事に明け暮れる娘に 変わって、必要最低限の面倒は…母方の祖母が見てくれた
祖母は…類の両親が離婚する時、類を引き取る事にした
両親に親権を放棄を要求すると、両親は類の親権を放棄した
以来、類は両親には逢ってはいなかった
祖母は娘を想って類を引き取った訳ではない
我が子が子供に見向きもしないばかりか、放置して死なれて事件に発展したら‥‥と危惧して…
二度と類には逢うな…と 条件を出し、類は祖母の養子となり生活する事になった
だがその祖母も…中学に上がると同時に亡くなり…
類は…一人になった
祖母が…財産を総て、孫の類に渡すと…遺言書を遺した
弁護士が類の後見人となり、類はそのまま祖母の家で暮らせる事になり、施設に行かなくて良くなったが‥‥…
何処まで行っても…類には孤独が着き纏った
家の中で…一人で過ごす
息を殺して人形になる
そうして生きて来た子は何時しか心を忘れ…
誰もいない部屋の中で人形に…なっていた
人と接して育たなかった江口類には、人の感情が…あまりない
ロボットの様な人間だった
感情のないコンピューター…アイツは人間じゃないと…言われていた
やる事がなくて…勉強ばかりしていたから、当たり前なのだが…
類は人との距離を計りかねていた
一人は楽だった
皆が遠巻きに見るか
憂さ晴らしの対象に一方的に突っ掛かって来る
だが類はそんな事はどうでも良かった
総てが‥‥‥類にはどうでも良い事だったからだ‥‥
そんな類だが…想いを寄せる人は…いた
類と正反対の…クラスの…嫌…学校の人気者
彼の様になりたいたと……憧れて止まない人は…いた
放課後…類は…教室に残って…グランドを見ていた
グランドにはクラスの人気者…久我山慶一が遊んでいるから…
彼は…生命力に溢れ…今を生きている…
そんな感じがして…目が離せなかった
自分にないもの総てを兼ね備えた男
それが久我山慶一だった
類は彼の様になりたかった
皆に愛され
皆に必要とされ
皆の中心で笑っている久我山慶一の様な存在に‥‥‥なりたかった
彼のような人間なら‥‥両親は自分を愛してくれたのだろうか?
彼はせんない事を想って、久我山への想いを募らせていた
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