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「ジーク様!」
「ジーク!!」
慌てて医師や国王たちがジークのもとへ駆け寄るが、ジークの顔は真っ青で、身体を揺すってもピクリとも動かない。
すぐに医師がジークの状態を確認した。
「…脈は弱く不整で、辛うじて呼吸をしているとういう状況です。検査をしてみないと正確にはわかりませんが、状況や症状から考えますと…これは神子様を召喚する際に稀に起こり得る急性魔力低下症かと思われます」
「…まさか…っ」
医師の言葉を聞いた右大臣がはっとシノを見つめて息を飲む。
「…シノ様の傷が治ったのは、”共鳴”でシノ様の魔力が高まったわけではなく、シノ様がジーク様の魔力を吸い取ったということですか?」
「…わかりません。このような事例は初めてですし、急性魔力低下症も、召喚の儀式の時以外に見たことはございませんので…」
状況が飲み込めずに呆然としていたシノは、その言葉を聞いてもやはり良く分からなかったが、それでも自分のせいでジークがこうなったのかもしれないという事は察することができた。
「…ジークさん…」
「一刻を争いますので、急いで医務室へ運びましょう!こちらへ人を呼ぶわけにもいきませんので…大臣殿、お手をお借りしてもよろしいですか?」
「もちろんです」
ジークは左大臣と医師に頭と足を、そしてじっとしていられない国王に腰を支えられ、慌てて運ばれていった。
扉を開けるのを手伝っていた右大臣は、皆が去っていく中扉を一度閉めるとシノの方へとからだを向けた。
右大臣のあまりに鋭いその視線に、シノは思わず目を反らす。
「…あなたは本当に神子様なのですか?」
「………え?」
そう問われても、シノは答えることができなかった。
…だって自身を”神子様”だと言いだしたのは、自分ではなくこの世界の人々なのだから。
しかし右大臣はシノの答えを最初から待つつもりはないのか、そのまま言葉を続けた。
「…神に愛されし”神子様”が、あんなに傷だらけの瀕死の状態で現れるなんて…おかしいと思ったんです。意識が戻ってもこの国は何の加護も得られないまま。天気すらも一向に良くならない。…それどころかジーク様の魔力を命にかかわるほど奪うなんて…
…あなたは神の使いではなく、本当は悪魔の使いなんじゃないですか?」
「………っ」
右大臣はそう吐き捨てると、部屋を出てジークの後を追っていった。
一人取り残されたシノは、呆然としながらもまだ出されたままになっていた自分の腕と足を見つめる。
ほんの少し痕が残っているだけで、傷は完全にくっついる。…きっともう何の治療もいらないだろう。
「………」
傷はほぼ完治し、もうどこも痛くなくなったのに…心だけはやけに痛く、苦しかった。
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