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夜の浅草にて

「―― ここじゃ路駐出来ないんで、この先にある  コインパーキングに停めて来ます」      と、浜尾さんは車から竜二と俺を降ろしたあと、  八木さんと共に車で一方へ去った。    おでん・ラーメン・たこ焼き・お好み焼き  ……等など。    その通りには多種多様な手押し屋台の店が  ひしめくよう並んで、営業していた。    いや、それにしても……こんな場所へ  スーツでドレスアップして、   クラウン マジェスタみたいな国産高級車で  乗り付けるお客って何なんだろ……。    って、思ってたら。  ここにある屋台は全部、煌竜会傘下の香具師が経営しており。  週に1~2度、こうして訪れ、  挨拶まわりを兼ねた抜き打ちチェックをするんだとか。    なるほどね~。    どの屋台からも”よっ、竜ちゃんお疲れぇ~”  みたいな親し気な声がかかって。    どの屋台でも、お腹がはち切れそうになるまで  ご馳走された。     『じゃ、ごっそうさん』 『ごちそうさまでしたぁ~』 『お粗末さん。またいつでも来てなー』  隅田川沿いの遊歩道をそぞろ歩き、  軽く腹ごなしをした後は ――、  今日のスーツに似合ったオシャレなホテルの展望ラウンジへ。    窓際のテーブルは半数がカップル用のペアシートで。    テーブルを挟んで椅子があるんではなく。  テーブルは窓辺にくっつくよう設置(配置)されていて、  椅子はそのテーブルと平行に並んでいた。  竜二は常連らしく ”ご予約席”と札の乗った  テーブルに竜二と俺は案内された。    あ、まぁ―― ここからの眺望は最高だけど、  男同士でこうゆうテーブルに着くのはかなり恥ずかしい……それに。 「俺はまだ未成年」 「気分楽しむくらいなら構わないだろ~」  って、竜二は言ったけど。  運ばれてきた飲み物はどう見てもカクテルっぽい。  ”乾杯”と、俺のグラスにカチリと自分のグラスを軽く合わせ、  ひと口飲んだ竜二はそんな仕草もすっごくキマっていて、  何故だかちょっとムカついた。    で、腹立ち紛れに飲んだ俺のオレンジ色の飲み物は ――  ひと口飲んだ途端、喉に焼け付く刺激が走って、咳き込む。    ゲホッ ゲホ ゲホ ……     「な、なんだよ、コレ……」 「何? って、ただのジュースだろ」 「良く言う」  それは紛れもないカクテルだった。    それもアルコール度のかなり高いテキーラを使った  ホテルオリジナルのモノ。     「なら、俺のもちょっと味見させてやる」    と言って、本日2回めの口付けをされた。  しかも今のは半ば強引に唇を割られ、  そこから彼が含んでいたカクテルが流れ込んできて。    カァァァ――ッと一気に顔が火照り、心拍数も急上昇。    彼の唇が離れていった後もしばらく俺は惚けた表情のままだった。   ファーストキスだけでなく、セカンドキスまで男……  しかも ”同じ男”に奪われるだなんて……。 

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