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第1話・運命の出会い。(1)
道路脇の花壇に植えられている秋桜 が、どこからか吹くそよ風に当たり、寂しい音を立て、揺れている。
高い空にある夕焼けは少しずつ朱を失い、夜の帳が降りてくる頃、朝はきちんとアイロン掛けをして出勤したにもかかわらず、すっかりくたびれてしまったグレーのスーツを身に纏 った、桐野 篤 は、重い足取りで、帰路をたどる。
今日もダメだった。
自分の無能さにことごとく打ちのめされ、大きなため息をついた。
篤は、電化製品の営業部を担当していて、量販店を訪問し、自社商品を売るという、重大な任務を課せられていた。
今日も一日中足を使い、様々な量販店を訪問した。しかし、結果は篤の頑張りに付いてこず、なかなか売れない。
それというのも、篤は商品についての説明が下手で、社交辞令も苦手だった。
けれど、『口下手』がすべての原因かと言えば、実はそうではない。売れない要因は、他にもあった。
篤は、幼い頃に母を亡くし、父親と二人暮らしをしていた。そのため、家事全般はお手の物で、縫い物だって自分でできる。
――のだが、中身は必ずしも外見と同じだとは限らない。
篤の容姿ときたら、最悪だった。
けっして睨んでいるというわけでもなく、垂れ目なのに目付きが悪い。そう見えるのも、すべては目の下に隙間無くびっしりと生えている睫毛のせいだ。そのおかげで、目の下に隈があるように見え、目付きが悪い印象を与えるのだ。
それに加えて、体格にも問題があった。
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