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第1話・運命の出会い。(2)
本人がどれだけジムで汗を流し、身体を鍛えようとも、筋肉は付かず、ひょろっとした軟弱な身体のままだった。さらに輪をかけて、百八十センチも身長があるから余計に質が悪い。
愛想良く振る舞おうと微笑めば、そのぶんだけ怖がられ、ただ立っていると、邪魔だと言われがち。
おかげで、量販店との電話でのアポイントメントを取ることができても、その先がうまくいかないことがほとんどだった。
これでは、営業部が勤まらない。大学を卒業してから、今の会社に勤めて三年。まったく進歩がない自分にほとほと呆れる。
篤はもう一度深いため息をつき、肩を落とした。
すっかり自信を失った篤は、いつもと同じ帰路に付く気にもなれず、人通りの少ない裏通りを選んだ。
大学に進学するにあたって、実家から引っ越してきて七年にもなる。もうすっかりこの道も知っている。――筈、だった。
けれど、今日はどこかいつもとは違う。
静かな坂道と、畑ばかりが目立つ小道。それは変わらないのだが、どこかが違う。
篤は首を傾げながらも、人気のない道を進んでいく。すると、一軒の、こぢんまりとした古風な店が目に入った。
古風と言えば響きは良いが、何十年も前からずっとある、随分と古ぼけた雰囲気のする店だった。
ふと見上げると、看板には、『doll』と書かれた文字が見えた。
この店、どうやら人形専門店らしい。
(あれ? こんなところにショップなんてあったっけ?)
篤は首を傾げる。
実は、篤は大が付くほど可愛い物好きで、幼い頃から、人形やら縫いぐるみに目がなかった。
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