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第3話・運命の出会い。(3)
子供の頃は、まだ許されていた趣味だが、まさか二十四にもなって人形やら縫いぐるみやらを軽々しく持ち歩くような根性は持っていない。
青年になってからというもの、テレビや雑誌などで見るだけで、手元に置くことを我慢して過ごしていた。
しかし、それも今日は、よほど仕事でダメージをくらっているらしい。どうにもこの店が気になって仕方がなかった。
とにかく、自分を癒してくれる可愛いものがほしかったのだ。
篤の足は、自分の意図に反して、欲望のままに進む。
ドアノブを回し、軋みを上げる音と同時に中へ入ると、外装から予想していた通り、すぐにかび臭い匂いが鼻をついた。
けれど、店内は、外からの見た目ほど、不思議と狭く感じない。壁に沿って棚が配置されており、骨董品と思しきあらゆる外国の人形から、猫や犬などの愛らしい縫いぐるみなどが所狭しと並んでいる。
品数は、さすが、『doll』と看板を掲げているだけのことはある。そこら辺にあるホビー店よりもむしろ、充実しているように思えた。
「いらっしゃい」
「うわあっ!!」
「驚かせてしまったかねぇ、すまなかったね」
突然、背後から嗄(しわが)れた声で話しかけられ、篤はみっともなく大声を出して驚いた。
振り向けば、そこには、篤の肩までくらいの高さしかない、白髪を後ろで団子結びにしている老婆が立っていた。
服は、どこか異国のものだろうか、日本ではあまり見ない、深い緑のドレスを身に着けている。
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