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第1話・運命の出会い。(4)

「何かお探しだね。この人形なんてどうだい? 彼女がいない、特殊な趣味をしたお客様には、癒されること間違いなしだと思うよ?」  老婆は大きな目を細め、品定めでもするかのように篤を見ると、ひとつの棚から、何やら人形を持ち出してきた。  彼女の手には、男の子タイプだろう。腰まである金色の髪と短いローブが特徴的なヨーロッパ風の、可愛いドールがあった。 (どうして俺が、彼女がいないってバレたんだ? しかも、『特殊』って……まさか俺の性癖がバレてる?)  老婆の言葉に、篤は驚きを隠せない。  篤が驚いたのには理由があった。  実は、篤は他人には言えない性癖を持っていたのである。  自分が生まれてこの方、女性を好きになったことはなかった。  そして気がつけば、いつも同性に惹かれていた。  過去は自分の性癖について思い悩んだ時もあった。けれども一度割り切ってしまえば、もう何も怖くない。  それに、ゲイは日本でもそれなりにいることも知っている。  しかし、自分は奥手で、しかも特別、美男子でもなければ、これといってずば抜けた能力も、人様から褒められるような趣味も持ちあわせていない。外見が良くないことは、もう十分理解していた。  だから自分は一生このままで、隠れゲイとして生きていくのだと、そう思った。  悲しい人生だが、こればかりは誰にもどうすることはできない。  篤は、自分の性癖について知られてしまったかもしれないことに冷や汗を流し、居心地が悪くなって老婆から視線を外せば、ある棚が目に入った。

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