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第1話・運命の出会い。(5)
「あ、あれは、皇帝ペンギンですか?」
篤の、視線のそこに、等身大はあるだろう、ペンギンの大きな縫いぐるみがあった。
でっぷりとした体つきに、つぶらな瞳。
本来、皇帝ペンギンとはすらりとしているものだ。あれは、どう見ても皇帝ペンギンぽくはない。
それでも皇帝ペンギンかもしれないと思ったのは、くちばしの下にある喉の部分が黄色をしていて、後ろに繋がっていたからだ。
「ほう、お客様はお目が高いねぇ。あれは、ある王家から譲り受けた品なのじゃよ」
篤の問いに、老婆は目を細め、黄ばんだ歯を見せて笑う。
老婆は、どこか不気味な雰囲気を漂わせているが、今はもう、そんなことはどうでもいい。縫いぐるみに一目惚れをした。
とにかくあの皇帝ペンギンの縫いぐるみがほしくて仕方がない。
縫いぐるみに近づき、穴があくほど見つめると、なんとも愛らしい顔立ちをしている。
グレーのボディーは凛々しく、小さくてつぶらな目は光沢がある。それに、黄色いくちばしはふっくらしていて、人間の唇のようだ。
「あの……これ、おいくらですか?」
ひと目見て気に入った篤は、棚から皇帝ペンギンの縫いぐるみを手にすると、老婆に訊(たず)ねた。
なるほど、王家からというのはまんざら嘘でもないだろう。
縫いぐるみの毛並みは綺麗だし、色合いも鮮やかでなかなか美しい。手触りだってシルクのように滑 らかだ。
王家からの物だとすると、さぞや高い品に違いない。
これから告げられるだろう金額に、緊張のあまり、口内に溜まった唾を飲み込んだ。
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