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第1話・運命の出会い。(6)
しかし、どんな金額であっても、篤はこの縫いぐるみが気に入っている。
生憎、今の手持ちはそこまでない。
古風な店だし、クレジットカードは使えるだろうか。
なんとしてもこの縫いぐるみを手に入れたい。
篤は切に思っていた。
しかし今まで何かをこんなに欲したことがあっただろうか。物欲はほとんどいって皆無に近かった篤にとって、不思議な体験だった。
その反面、これだけ精巧に作られたものなのだ。欲するのも無理はないと、思い直す。
果たして老婆から告げられる金額はいくらなのか。
篤は、緊張の面持ちで老婆の言葉を待つ。
「この商品がお気に召したのかい? これはなかなか……いやしかし、なるほどねぇ。自分に自信がないお前さんにはぴったりの相手かもしれないね」
どうにも金額が気になって仕方がない篤に、老婆は小さく頷き、何やら意味のわからないことを呟いた。
「七千円でどうだい?」
「え? そんなに安くて大丈夫なんですか?」
どんな商品だって、この大きさだ。ホビー店で買ったとしても、一万円はする代物だと思う。
しかも、王族から譲り受けた品となっては、いくら人形に素人だといっても、これは破格の値段だということはすぐにわかる。
「かまわないさ。お客様にはこの子が必要だろうて。此(これ)もお客様を気に入っておるし……」
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