46 / 91

4-8 夜が明けて

明かりで目を覚ます。 「ん、、ん?朝?」 「おはよう。」 後ろから藤澤君が囁いた。 すっかり、暗闇は消え去り、希望に似た光が僕らを照らした。 あぁ、光がこんなにも僕を勇気づけてくれるのかと実感する。 一緒に外へ出ると、天気は、晴れていて、霧はすっかりなくなっていた。樹木に雨の水滴が綺麗に反射している。 「いい天気だな。」 藤澤君は、背伸びをした。 「非常食、まだ残ってるから、食べとけよ。」 「うん」 「左足は、どうだ?」 「昨日よりは、よくなっているみたい。」 「なら、よかった。食べたら、少しでも開けた場所へ行こう。」 「開けた場所?」 「あぁ、ここじゃヘリに見つけられないかもしれないからな。」 そっかぁ、僕らは、遭難していたんだ。 なんだか、藤澤君といるとそんなことをいつの間にか忘れてしまっていた。 準備をし終え、地図とコンパスを見ながら、発見される可能性があるところへゆっくりと移動する。しばらく移動すると、少し開けた場所が見つかった。 「ここがいいだろ。エマージェンシーシートを出してくれるか?」 「わかった。」 エマージェンシーシートを出して渡す。しばらく僕たちは、ここで待つことにした。辺りに、人の気配はなく、待っている時間がとても長く感じた。 もし武藤君たちが、救助を呼べていなかったら、、、 そうなると、僕らは、ずっと山の中なのかなぁ、、、 そもそも武藤君たちは、無事なのかなぁ、、、 気づけば、どんどん不安が広がっていた。 「大丈夫。信じよう。」 藤澤君に僕の気持ちが伝わったのか、手を握ってくれる。 「うん。」 しばらくすると、ヘリコプターの音が聞こえてきた。 「あっ、ヘリコプターの音が聞こえるよ!!」 藤澤君は、エマージェンシーシートを大きく振り、それに気づいたのか、ヘリコプターがこちらに旋回してくる。 「これで、気づいてもらえたな。」 エマージェンシーシートを僕に返してくれて、ザックに入れるように言った。ヘリコプターが徐々に近づいてくる。 今度は、僕からそっと手を握る。 「よかった、、」 藤澤君を見つめて、少しの涙を含んで笑った。 安心したせいか、こんな危機的状況なのに、もう少しだけ藤澤君といたいと思った。多くの人に迷惑をかけているのに、心の底で、藤澤君との時間が終わるのが悲しくて胸が苦しい。 藤澤君は僕の手を強く握り返してくれる。 その手がどこまでも温かった。

ともだちにシェアしよう!