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5-5 体育祭当日
体育祭、当日。
朝日に照りつけられ、いつもより早く目が覚めた。
一階に降りると、僕に気づいた咲父さんが話かけてきた。
「おはよう。いつもより早いね。」
「おはよう。なんだか、早く目が覚めちゃった。」
「朝ごはん、できてるけど、食べる?」
「うん」
「今日は、体育祭だね。仕事で見に行けなくて、ごめんね。」
「大丈夫だよ、高校生になってまで、色々見られるの恥ずかしいから、、」
「そう?愁ちゃんの頑張っている姿、見たかったなぁ。くれぐれも怪我だけはしないように気をつけてね」
「うん、ありがとう。」
学校へ行く準備が終わると、勢いよく玄関の扉を開けた。
天気は、快晴で、秋の寒さを肌で感じる。
行こう。
僕は、学校へと向かった。
学校へ着くと、いつもより熱気を感じる。辺りから、掛け声が聞こえ、運動部にとっては、気合が入る行事なんだと思う。
教室前で偶然、藤澤君と出会った。
「おはよう。」
普段と何も変わらず、声をかけてくれる。
「おはよう。今日は、、、、」
「ん?」
「寒いね、、」
「だな。」
今日は、、、、頑張ろうね。とは、言えなかった。
藤澤君の事は、好き、けれど、藤澤君の肩を持つことはできない。
武藤君の思いに僕なりに精一杯応えたいから。
今日は、どこまでも中立でいたいんだ。
教室へ入ると、武藤君がすでにいて、目が合ったけれど、何も言われなかったし、僕からも言えなかった。あれ以来、一言も会話をしていない。それは、きっと、武藤君なりの真剣さの表れだということを目を見て改めて思う。
今日は全力で臨もう。
「おはよう。今日は、頑張ろうね!」
優君が話かけてきた。
「うん。頑張ろうね。」
「おはよう!」
凛君も元気よく話かけてくる。
「おはよう。」
「騎馬戦で怪我すんなよ!」
優しく笑い、僕の肩を組んだ。
「気をつけるよ。」
「がんばれよ!」
凛君なら、気づいているはず。僕と武藤君と藤澤君の間に何かあったことを。
けれど、凛君は、何も聞かなかった。それが凛君なりの気遣いだと思う。
ありがとう、、ただ、そう思った。
坂木先生が入ってきた。
「おはようございます。今日は、待ちに待った体育祭ですね。親御さんたちが来られる人もいると思いますので、出会ったら必ず挨拶をするようにしてください。それでは、みなさん、今日は、怪我をしないように全力で頑張りましょう。」
とうとう、様々な思いを乗せた体育祭の幕が上がった。
校庭に集まると、開会式が始まる。
「宣誓、僕たちは、正々堂々と戦うことを誓います。赤組代表・・・」
宣誓が、赤組、白組の両方から行われる。無事に開会式が終わり、競技が始まる。僕らは、赤組と白組で分かれて座り、優君と一緒に応援することにした。
最初の競技は、大玉転がしだ。大きな玉をみんなで転がし、その玉が変な方向に行くのを見て、みんなが笑っている。僕は笑わずにその光景を見つめていた。次の種目は、リレーだ。颯爽と走る藤澤君の姿を見ていると、昔から何も変わらず、やっぱりカッコいいと思った。
僕らの種目の玉入れの時間となった。僕と優君は、入場口まで一緒に行くと、そこに響君がいた。僕らは、お互いに頑張ろうと言い、玉入れに取り組んだ。玉入れは、思いのほか、すぐに終わった。
次は、綱引きだ。赤組の一番後ろには武藤君がいて、その顔は、冷静そのものだった。
次々と競技が終わった。
そして、午前ラストの棒倒しの時間が来た。
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