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6-2 歌うという決断

教室に張られたポスターを見るたびに、藤澤君に言われた言葉を思い出す。 (歌う姿、見たかったなぁ、、) 藤澤君に対する恋の歌を歌ってみようかな、、 恋なんて、、自分で考えても、恥ずかしくなる、、 けど、もし、喜んでくれたら、嬉しいな、、、 そして、思いに答えてくれたら、こんなにも幸せなことはないのに、、、 ポスターを見ながら考えていると、優君が隣にやってきた。 「【歌コン】出るの?」 「えっ、、ちがうよ、、」 「誰に歌うの?」 「だから、、出ないってー」 「藤澤君、喜ぶかもよ?」 からかいながらドンドン攻めてくる。 「もう、、けど、、喜ぶかな、、」 「ウチなら、好きな人が自分を思って歌ってくれたら、嬉しいけどなぁ、」 優君は、ずっとニコニコしていた。 次第に、藤澤君のために、歌いたいと思うようになった。 歌で思いを届ける。 届けたい。僕の気持ちを。 聞いて欲しい。僕の願いを。 出てみようかな、、、 そして、数日が経ち、【歌コン】に出ることに決めた。 優君に言ってみると、 「ほんとに?」 「うん。」 「思いが届くといいね。当日絶対見に行くね!」 「ありがとう。けど、緊張しちゃうな、、」 「大丈夫!きっと、うまくいくよ!!」 応援してくれた。 次に凛君に言ってみた。 「僕、【歌コン】に出ることにしたんだぁ、、」 「マジか?すげーな。歌う相手は、やっぱり?」 「うん、、気づいてるよね、、」 「まぁな!」 「凛君、嫌じゃない?」 ずっと疑問だった。 元彼である凛君が、僕をどう思っているのかと。 「別に!もうとっくの昔に終わったやつだしな!」 凛君は、サバサバとしていた。 「それより、どんな感じで歌うんだ?好きですとか?」 歌う内容に興味津々みたいだ。 「いや、まだ考え中、、、」 「ま、どんな感じでも愁君の思いは、届くよ!つか、もう届いてんじゃね?」 凛君は、高らかに笑った。 「えっ、そうなの?」 「たぶんな!本番頑張れよ!俺も見に行くから!」 僕の肩を叩く。 「えっ、なんだか、恥ずかしいよ、、、」 「ますます、見に行きたくなるな!」 「もう、、」 あぁ、よかった。 凛君は、とっくの昔に吹っ切れていたんだ。 実行委員に出場することを伝えると、丁寧に詳細の説明をしてくれた。歌は、カラオケでもいいし、自分で作曲してもいいし、どんな形態でも問題なく、自由にやっていいと教えてくれた。作曲は無理だけど、作詞をして藤澤君に自分の思いを伝えたいと思った。 作曲、どうしよう、、 響君に頼んでみようかな、、 けどなぁ、、響君も忙しいから、、、 とりあえず、相談だけでもしてみようかな、、 いつもの帰り道。僕は、響君に相談を持ち掛けた。 「前夜祭、【歌コン】に出ることにしたんだぁ。」 「ほんと?」 響君は驚いている。 「うん。」 「誰に対して歌うの?」 「ん、、、、その、、」 「藤澤君?」 「うん、、、」 少しの沈黙の後 「そっか。」 響君は呟いた。 「そこでね、相談なんだけど、、作詞は、頑張ってしようと思うんだ。けど、作曲は難しいから、もし、もしね、時間あるなら作曲して欲しいんだ、、」 響君は何も答えずに、静かに前を向いている。 「ごめん、、、やっぱり、、忙しいよね。」 「大丈夫!やるよ!作詞したら見せて。そこから、イメージを膨らませて作ってみるよ。」 笑顔で受け入れてくれた。 「あ、りがとう!」 「ううん。愁君の気持ちが届くといいね。応援してる。」 響君に作ってもらえたら、絶対にいい曲ができる。 僕は、作詞を頑張ろう。 思いがちゃんと届けばいいな、、

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