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第9話

 物足りない。内壁にひっそりと息づく突起が、それを(いじ)めてほしいと盛んに訴えている。  その、秘密の(ぼたん)を雄身にいたぶられることで得られる悦びを躰が憶えてしまった──。 「くそ……っ!」  狭間をまさぐった。花芯が物欲しげにひくつき、けれど、ぴたりと(とざ)されている。  舌打ち交じりに指をこじ入れた。とたんに乾いた襞が、つれた。  こんな浅ましい真似は、やめよう、そうだ、やめるんだ。  自分はノーマルだ。アナルを開発されて、そこを淫具で攻め立てられるのが病みつきになってしまうやつもいるらしいが、自分は断じて違う。  今のはちょっと……そうだ、魔が差したにすぎない。指を挿れて肉の芽をこすってみようだなんて、さもしいにも程がある。  うつ伏せた。枕に顔を埋めて、熱を帯びた吐息を逃がした。欲望が身内にくすぶって、尾骶骨のあたりがぞわぞわする。  射精()したい。ただし茎をしごいて射精せば、それですっきりするとは思えない。  子どもだましのマスターベーションでは、とうてい満足できない。指がふやけるほどに(なか)をかき混ぜて、襞が蕩けていく感触を存分に味わいたい。  最奥の疼きは耐えがたいレベルに達して、佑也を苛む。  淫技を駆使して、橘がそこを愉楽の壺に作り替えてしまった。  は好悪を別にして強烈な体験だった。  声が()れ果てるまで貪り尽くされてから十日も経てば、そろそろ禁断症状に悩まされても、おかしくない。  マスターベーションを憶えたてのころは、どこをどういうふうにいじればもっと気持ちよくなれるか、研究したものだろう?  人格が分裂したように、佑也をそそのかす者がある。  ほんの退屈しのぎだ、やせ我慢を張るのは馬鹿らしい。  それに前と後ろを同時に可愛がるコツを摑めば、独りで愉しむときのレパートリーが増える。だいたい一回や二回、内を突きしだいてみたからといって、なんだと言うんだ? ほんの出来心で通るさ。  息が弾む。乳首はこりこりと尖り、穂先はねっとりと蜜をまとう。

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