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第8話

 とろとろと眠気が差してくる。微睡みにたゆたいかけて、と、そのとき。  ずくり、と躰の芯が疼いた。  ありていに言えば──舌と指を交互に用いて隘路(あいろ)を解きほぐされたときと同様に。  その一種、おぞましい感覚を疎ましがって躰をずらせば、再び後ろが疼く。恐るおそるブランケットをめくって、目をしばたたいた。どくん、と心臓が跳ねた。  ペニスが萌しかけている。  怒張で陰門をこじ開けられたさいにギャザーが裂けたが、その傷は治った。だから今、全身を走り抜けた妖しいおののきは、別の種類に分類されるものだ。  それは、まぎれもない淫欲──。  空調の悪戯で和毛がそよぐ。そのせつな、下腹部が甘やかにざわめき、それが呼び水となって、背徳感をともなった欲望が芽吹く。  透明な指で穂先をいじられているように、茎が徐々に頭をもたげていく。  乳首が独りでにしこりはじめ、それがマットレスにこすれると、繊維が乳暈(にゅううん)を撫でていく感触にさえ昂ぶって、次の瞬間には倍にも膨らむ。  跳ね起きた。掌がじっとりと汗ばみ、その掌をアッパーシーツになすりつけた。ブランケットをひっかぶって、縮こまった。  ちょっとした刺激にそそられて勃つのは、寝入りばなにはよくあることだ。そこを、くじってほしいと(こいねが)って蕾がほころびていくように感じたのは、気のせいだ。  繰り返し自分に、そう言い聞かせる。だが熱は一向に治まる気配がない。  それどころか記憶の扉が勝手に開く。性技に屈して淫液をまき散らしたさいの一部始終が、コマ送りで脳内のスクリーンに映し出される。  楔を打ち込まれて、官能の中枢に狙いを定めて攻め抜かれて、よがり狂った。  のったりと、あるいは強靭な腰づかいで攻め入ってくる橘。その幻影が目の前にちらつくにつれて茎が脈打つ。  我慢、できない。  包皮をむき下ろした。握った。こすった。  蜜がにじんで指がぬらつき、しかし馴染み深い快感に茎は張りつめていくものの、精を放つには至らない。

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