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螺旋階段は同じ所を通らない(19)◎

 節の目立つ長い指が、内側の柔らかい部分を擦っていく。行き先を予想して備えることなどできない。与えられた刺激を受け止めることで精いっぱいだ。 「もうちょっと、頑張れますか?」 「あっ……あ、ん……!」  内部を穿つ指が増えて、真壁の返事も聞かないままに動き出す。宮下の手つきは容赦無かったが、真壁の表情をよく見ているようで、拡張に伴う苦しみが大きくなる前に追求を緩めてくれる。  彼に指を入れられている所は、男同士で体を繋げることを望む場合、使わざるを得ない場所だ。けれど、本来は人と交わる機能を持った器官ではない。その上、真壁はここ数年、色事とは離れた生活を送っていた。宮下を受け入れるために、ある程度の苦痛が生じるのは承知の上だった。  それでも、ご無沙汰だったはずの体は徐々に開いていった。気持ちいい、という感覚も戻ってきた。宮下が根気強く、丁寧に解きほぐしてくれたからだ。 「もう、いいかな?」  ぽつりと部屋に響いた声は、この先を期待するような色を端に滲ませていた。声の主は心配に満ちた表情をしていたけれど、目の奥には燃えるような情動を秘めているのが、薄暗い中でも分かる。  出来る限り穏やかな微笑みを浮かべて、宮下の顔を引き寄せる。遠慮をさせたくなかった。自分のことを求めてくれた彼の全てを受け止めてあげたい。触れるような口づけと引き換えに、彼の指が引き抜かれた。  宛がわれた熱の存在は想像以上に確かなもので、思わず息を呑む。唾液を飲み込む音に覚悟を決めると、熱の塊が中を貫いて、疼く空虚を埋めて沈んでいった。 「は、あ、ああっ……ふ、う」  圧迫感から逃れるために深呼吸したが、彼の形を余計に強く感じてしまって、意識を逸らすことができない。中を貫く彼の質量が増す度に、呼応するように内部も勝手にうねって、声を上げてしまう。思い通りに動けない自分への苛立ちが、中途半端に与えられる快感と混ざったまま、腹の底で燻って収まらない。  息が整うにつれて、物足りなさが全身を苛んだ。ゆるゆると浅いところを漂う宮下に、もっと深く、奥を探ってほしい。期待を込めて見上げた彼の額には汗が浮かんでいる。それでも、真壁を捉える瞳には不思議と余裕が感じられた。 「真壁さん、どうしたの?」 「んあっ……!」  また、微弱な刺激が与えられた。あと少し、というところで止められる。導くように中に力を込めると、宮下の唇がにやり、と弧を描いた。彼がわざと手加減しているのだと、そのときようやく気が付いた。  真壁の様子に細かく気を配っていた彼のことだから、きっと心配して遠慮してくれているのだと思っていた。実際は、真壁が不満に苛まれていることなど、宮下は百も承知だったのだろう。 「……ずるい、な」 「そう、かな。俺だって、真壁さんに、求めてもらいたかっただけ、だよ?」  上がる息の合間に、宮下の願望が覗いている。困ったように眉を下げている表情が、真壁の胸を締め付けた。  愛おしい。何かしてあげたい。応えてあげたい。二人の望みは本質的に同じもので、叶え合うことができるはずだ。もし違っていたとしても、彼の望みを現実のものにしてあげたかった。  どちらからともなく吸い寄せられるようにキスをして、舌を絡める。隙間から漏れる低い声に興奮を覚えながら、体に刻み付けるように、自分を刺し貫く彼を締め付けた。 「ちょっと、真、壁さん……!」  「っ、ん……もっと、奥に欲しい、な。お願い、宮下くんが良いんだ。宮下くんじゃなきゃ、だめ、だから」  気恥ずかしさに襲われながら欲求をぶつけると、腰を掴む手に力が入って、望み通りのところに宮下が達した。そのまま揺さぶられて、それ以外のことは何も考えられなくなる。 「ほん、と……真壁さんって、想像以上のこと、してくれる、よね」 「あ、んっ……は、ああっ」 「もう一回、言ってよ。俺じゃなきゃ、だめって、言って?」 「あっ、ああ……! む、無理、んん、あっ」  全身の制御が効かない。頭の中には彼への愛情を示す言葉が幾重にも連なっていたはずなのに、快楽の靄に覆われてかき消されている。全て余すことなく彼に渡したくても、欠片さえ喘ぎ声に塗りつぶされてしまう。  彼に触れる場所が全て熱い。過去に脅えた思い出も、甘い言葉をかけ合う今の喜びも、全て関係なく溶かされていく。  虚ろな器に水が注がれるように、隙間なく彼に満たされる。汗ばんだ背中に腕が回されて、自然と笑みがこぼれた。

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