1 / 2
彼との出会い1
桜が舞う季節、暖かい風を全身に受けながら、この美蕾 学園に僕、天羽 蓮春 は入学することができた。
「無事に入学できてよかったわ! これで一安心ね」
少し高い声が、僕に降り注ぐ。すごく喜んでいるようだ。
「僕は少し不安だよ」
「あら、どうして? 入りたかった学園に入学できるのに」
「無事に入学はできたけど、授業とかついていけるのかなって……。 不安でしかない」
余程、浮かない顔をしていたのか母さん、天羽 華織 は何も言わずに頭を撫でてきた。母さんなりに心配してくれているんだろう。将来、母さんや父さんに楽をさせてあげたい、だからこの学園に入学できるように必死で勉強をしてしてきたのだ。
「そうだわ。 悠星 さんが蓮春くんに、お話があるんですって」
「えっ、なんだろう」
悠星というのは僕の父である、天羽 悠星 のことだ。それにしても、父さんから話があるなんて珍しい。そんな時、僕の中でモヤモヤした気持ちが体を駆け巡った。
「とにかく、悠星さんが待ってるからお家に戻りましょう」
「うん」
母さんは話の内容が気になるのか、それとも単に父さんに早く会いたいだけなのかはわからない。とにかく、早く早くと僕を急かして、家がある方に歩き始めた。
それから、20分程の道のりを歩いて、僕と母さんは家まで帰ってきた。
「おかえり、華織、蓮春」
「ただいま、悠星さん!」
「ただいま、父さん。 さっき、父さんから僕に話があるって聞いたんだけど……」
どんな内容なのか不安でしかないけど、変に先延ばしにしてもと思い玄関で出迎えてくれた父さんに、早速聞いてみた。
「この後話すから、少しリビングで待っていなさい」
それだけ言うと、父さんは自分の書斎に入ってしまった。すぐに言わないのは、余程重要なことなのかもしれない。もしかして、仕事で転勤になったから一人暮らししてくれ、とかだったらどうしよう。これから、勉強に追われる日々が待ち受けているに違いないのに、そんな事になったら暮らしていける自信がない。
そんな僕の不安をよそに、母さんはご機嫌なのか鼻歌を歌いながら、紅茶を入れていた。
「母さん、なんか機嫌がいいね」
「そんな事ないわよ〜。 いつも通りよ」
そう言われると、母さんはいつも通りなのかもしれない。けど、僕には父さんが何を言うのか、既に知っているようにも見えた。
ともだちにシェアしよう!