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第1話:気づきたくなかった

俺は何処にでもいる、高校一年生。南曽時界十。・・・でも普通の高校生ではない。 とある事情で家出をし、生き抜くため、人の依頼を聞いてお金を稼ぐ 探偵屋みたいなものをやっている。 内容は主に迷子のペット探しや、そこら辺の問題を解決するといった いわば『何でも屋』という奴だ。しかし、そんなある日、俺の所に妙な男が来た。 名は『三木白』。こいつはとあるヤバい組織の幹部で、裏で平気で二、三は人に 手をかけている簡単に言えば、マフィア的なやつだ。 そんな奴に何故だか俺は気に入られ、ここに入り浸っているので、 最近の俺の悩みの一つになっている。それに俺はまだ学生なので、学校終わったと同時に 毎度毎度、しつこく訪ねてくるようになったので最初は無視をしていたのだが、 平気でドアをこじ開けようとするものだからもう怒りを通り越して呆れが勝ったものだ。 まぁ・・・この上の一文だけ読んでいると警察は呼ばないのか?と疑問に思う奴も居るだろうが、そこは俺の『事情』に関わって来るので今回は端折らせてもらう。 そして、その当の本人は今も俺の目の前に座り、自分が勝ってきたという高価な紅茶をすすりながら、自分の『仕事』の資料を手に睨めっこをしていた。 「・・・またか?」 と。目の前の椅子に座りながら自分も紅茶を飲む。相手は顔を上げ、 少し眉をひそめながらも、 「ん。まぁね。流石『探偵』君。」 『探偵』。いつの間にかそう呼ばれるようになって本当に事件を解決する探偵をやっているわけでは無いのにこいつは俺の名前ではなく、いつも決まって『探偵』呼びをするのだ。 「・・・いや、そこに書いてあるの有名な大企業の社長だろ。誰だって見ればわかるし、この前ニュースで見たし」 「資料覗くなよ~エッチ!!変態!!」 とか言うもんだから流石に頭にくる。 「てめぇが言えたタチかストーカー野郎。」 「相変わらずドキツイ事言うねぇ、『探偵』」 つうか資料覗いただけで変態呼ばわりはされたくない。 と思いつつ、誰のせいだ誰のという視線でそいつを睨めつけた。 「・・・まぁ、実際その通りなんだけどな。いや~困っちゃうよね~が居ると。」 といつも通りニヤニヤ笑うので、いつものことだろ・・・と思いながら紅茶をすすった。 ______________________________ そして、その『仕事』終わりの夜、以外にもその男は俺の所に来た。 「おい・・・こんな夜中に何の用だよ・・・」 「・・・わりい・・・・『探偵』・・・ちょっとだけ・・・ほんのちょっとだけで  いいから・・・風呂・・・貸してくれね?」 と、顔は見えないが、明らかに疲弊している感じだった。 こいつは流石に可哀想でほっとけないので仕方なく了承した。 風呂から上がった後も元気がなく、すごく気分が悪そうだった。 「おい・・・なんかあったのか?取引に失敗したとか・・・?」 と、なんとなく気を使ってしまう。こんな調子のこいつを見るのは初めてだったからだ。 「・・・ね、寝れば何とかなるから・・・本当に大丈夫だって・・・。」 と明らかに作り笑いをしたからだ。いつもなら『探偵』らしくないだの 気にしてくれるのかなどおちょくる様な言葉をかけてくるのだが、 今日は本当におかしい。やはり何かあったに違いない。 生憎、ここには部屋で寝れるようなところは俺の部屋しかない。こいつが 寝たいなら俺の部屋のベットか、ここ部屋に置いてある俺たちが座っている ソファーぐらいしかないからだ。 「何かあったんだろ!!ちゃんt・・・っ!!」 と言い終わらないうちに俺は喋りかけていた奴に押し倒されていた。 突然のことで頭が追い付かなく、一瞬何が起きたか理解するのに数秒かかった。 (え?なんで俺、今、こいつに押し倒されて・・・?) と頭の処理が追い付かないうちにこいつの今まで見えなかった表情が 見えた。辛く、苦しそうなのに赤みを帯びた顔。 (・・・は?・・・こいつ・・・なんでこんな顔・・・して・・・) と思っていると、急に抱きしめられる 「は!?おい!!ふざけんな!!酔ってんのか!?」 ハグされながらも自分が下敷きになっているし、体格的にあっちが上なので 藻掻くことしかできない何とか手でバシバシと背中をたたくが、 それと同時に相手の下腹部の違和感を覚える。 「・・・おいおい・・・冗談だろ・・・?」 だが、ある意味、こいつの今までの謎の行動に理解がいく。 薬を盛られたか何かで慌てて飛び出してきたんだろうか? だとしても自分を巻き込まないでほしいとか思っていると、 相手がポツリポツリとうわ言の様に耳元で呟いた。 「・・・・俺・・・ずっと最初はさ、本当にただの好奇心だった・・・  なのに、いつの間にか仲良くなりたいとか・・・勝手に自分の中で  お前のことライバルって決めていたけど・・・それ以上の思いが  溢れてきて・・・なんで・・・なんで・・・いつの間にか  お前のこと好きになっていたわ・・・」 そう言われ、理解が追い付かなかった。何を言っているんだ? 相手は男だぞ。しかもお前を嫌っていて、敵視していて・・・ でも、よくよく考えると、今までさんざん言いながらも 何処か自分もだんだんこいつの事を思っていた。 いつの間にか学校から帰ってくればどうせ今日も来るだろうとか。 今日は仕事だろうかとか。またちょっかい掛けてくるんだろうとか 思えば自分もこいつの事を考えていたような気がする。 そう思えてくると、途端に自分もなぜか体が熱くなってきた。 「っじょ、冗談じゃ!!」 ないと言いかけた時には遅かった。こいつと至近距離にいるから 顔を上げた瞬間、口と口が触れ合ったのだ。つまり、キスというやつだ。 「ん!!?」 だが、こいつは何か薬を盛られているためか、制御が効いていないのか、 ちゅくちゅくと俺の口を貪るかのように激しく絡み合った。 「んん!!」 それと同時に下腹部も擦られるものだから堪ったものじゃなかった。 俺は男同士でやったことはないからだ(誰だってそうだろうが) そんな口に集中していると、下の方に衝撃が走る。 「!!ば、どこ、触って!!」 そこは紛れもなく俺自身があるところだ。いつの間にやったのかズボンが 半分ぐらい下ろされて俺自身が顔を出していた。 「・・・界十。」 名前で呼ばれるのは『父親』以来だ。その名前呼びに背筋が凍って身動きが取れなくなる。 あの『父親』の様な冷たい声に過呼吸になりかける。 (落ち着け!!目の前にいるのはあいつだろ・・?!) そう思っていても上手く呼吸ができない。怖い。目の前の男が手を出してくる。 「辞めろ!!」 俺はそういって突き飛ばしていた。目の前のあいつは我に返ったのか、 ハッとした表情で見てくるが、俺はそれどころじゃなかった。 「ひゅ・・・や、やめ・・・やだ・・・やめて・・・っ」 意識が朦朧としてきたその時だった。 「『探偵』!!」 そういって、そいつは手を握ってきた。そしてまたキスをする。 目の前にいるのがあいつだとわかって俺はポロポロと泣き出した。 「・・・悪い・・・無理させて・・・ごめんな。俺、おかしくなってたわ・・・ 酷い事して悪かった・・・忘れてくれ、『探偵』。」 そう言って気不味そうに立ち去ろうとしているので、俺はつかさず 背中にキックした。 「痛っ!!ちょ、探て・・・い?」 「・・・何勝手に終わらせようとしてんだ・・・馬鹿。」 ここで返したらきっとこいつの関係はここで終わる。そう俺の勘が告げていた。 「い、いや・・・だって・・・探偵、嫌だろ?こんな・・・それこそ  二十歳超えたおっさんに言い寄られて・・・探偵の事だから・・・」 案の定その行動に驚いたそいつはきょどりつつ、俺に下手な演技をする。 「だから!!勝手に決めつけんなって!!」 話が聞こえてないそいつに顔を近づけ、手を握る。 「・・・確かにさっきのはあれだったけど、お前のことは嫌いだなんて言ってないだろ!!  ・・・急に・・・名前呼びするから・・・あいつのことを思い出しちまったんだよ・・・」 と言いながらも徐々に言葉が尻すぼみになっていくのであいつの顔を直視できない。 もう穴掘って隠れたい気分だ。 「・・・そ、それって・・・どういう・・・」 「・・・だ、だから・・・」 俺は流石に口にキスはできないので、なんとかそいつを手繰り寄せ、 頬にキスをした。 「・・・こういう意味だよ・・・言わせんな。馬鹿・・・」 といい、俯いた。しかし、いつまで経っても返事がないので、不思議に思いつつ、 顔を見ると、茹でタコみたいに真っ赤にそまったそいつがいた。 「・・・探偵・・・頬にキスの意味わかってやってるのか・・・?」 「は?キスに意味なんてあるのか?」 「・・・はぁ・・・いや、うん・・・知らない方がいいな・・・  というか言ったら殴られそうだわ・・・」 「はぁ!?どういう意味だよ!!気になるだろうが!!」 とかみつくと、そいつはヘラヘラ笑ってチュッと口に軽くキスをした。 「ちなみに、口にキスするのは愛情表現、恋愛的に好きってことをドストレートに  伝えてるんだぜ?」 といつもの悪だくみな笑顔を浮かべてゲラゲラ笑いうので 「!!・・・っ・・・やっぱり前言撤回!!」 と言って目の前の男をひっぺがす。 顔が赤いまま、俺は「もう寝る!!」と怒鳴り散らして、 「部屋に入ってくんなよ!!」 と、念を押して、自分の部屋にこもった。 後日、あいつは何もなかったかのように来て、そして前よりスキンシップが 多くなったのは言うまでもない・・・ 続く

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