これは偶然などではない。 　逃れることなどできやしないし、受け入れずにはいられない。 　全ての物事は思い描いたとおりに駒を進めていく。 　なにせ自分には切り札がある。 　だから失敗しようがないのだ。 【第一章　愛ニ囚ワレル】 「んっ…あっ…もっ、やめっ、あぅっ！」 　目下で呻く男は両手で顔を覆ってしまっているから、どんな表情をしているのかは想像しかできないが、きっと小綺麗に整った顔は、苦渋と悦楽がない交ぜになって歪んでしまっていることだろう。 「ああ、そんなに悦いんですか？　ココ、こんなに腫らせて……先走りでグチャグチャだ」 　どうせなら、手首も拘束してしまえば良かったという考えが、脳裏をチラリと掠めるけれど、自由なのに抵抗できない方が屈辱も増すだろうと、考え直して香川は薄くその口許に笑みを浮かべた。 「ちがうっ、こんなのっ！」 「佐藤さん、ホントに初めて？」 「やっ！　ああっ…やあっ！　抜け……抜けよ！」 　挿入している指の角度を少し変え、一気に奥まで深く穿つと、堪らないといったように手を動かしてシーツを掴むが、まだ矜持(きょうじ)は捨てていないようで抵抗する素振(そぶ)りは見せない。 「嫌ですよ。朝までにはまだ時間がたっぷりありますから……俺を失望させないでくださいね」 「クソッ！　おま…許さな……あぁっ！」 「その意気ですよ。佐藤さん」 　悪態をつくその顔は、だけど快楽を表すように目元が僅かに色づいて、最高に艶っぽい。 　平らな胸で尖り始めているかなり控えめな薄紅色を、指の腹で何度かこすると驚いたように目を見開いてこちらに視線を向けてきた。 「そんなとこ……触るなっ、俺は…女じゃ…んあ！」 「確かに女じゃありませんね。ただ、あなたのここは、これからオンナになるんです。シャツに擦れても勃起しちゃうくらいに……ね」 「ふざけんなっ！　こんな……ひっ！　ああっ！」 　あんまり口が悪いものだから、片方の尖りに爪を立てると、痛いと叫んだ佐藤の瞳に涙が浮かんだ。