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「ああ、痛かったですか?」  本当はわざとだけれど、殊更優しくそう告げながら腰を折り、乳首に舌をねっとりと這わせ「すみません」と甘く囁く。すると、佐藤の口から音にならない喘ぐような吐息が漏れ、片手で掴んだ彼のペニスが硬度を増して涎を垂らした。  今、香川が組み敷いている男は仕事の上司に当たる。香川自身は二十四歳で入社二年の新米だけれど、佐藤(さとう)和真(かずま)は二十八歳で係長の職に就いていた。 「こうしてると、とても三十前には見えませんよ」 「……煩いっ、早く…済ませろっ」  男女を問わず厳しい佐藤は、普段は眼鏡を掛けているせいで酷薄そうな印象を受けるが、それを外して整えられた髪の毛を多少遊ばせていれば、二十代前半くらいで通りそうな童顔だ。 「まだ無理ですよ。ここ、びっくりするほど狭いし、俺の結構大きいですから」  この年になってまだセックスをしたことが無いと知っているから、ゆっくり慣らしてからじゃないと佐藤に怪我をさせてしまう。  香川は生粋のサド気質だからそうなっても構わないが、嫌なのに無理矢理されたと逃げられるのは(しゃく)だったから、とことん快楽を注ぎ込もうと思っていたし、事実そうなりつつあった。 「ここ、苦しい?」  自ら脚を開かせるのはまだ困難だと考えたから、脚はMの形になるよう足首と股を皮の拘束具で固定して、そこから延びたロープはベッドヘッドの柵へと繋いである。  ひっくり返った蛙のような体勢を強いられた佐藤は、最初は抵抗しようとしたが、そこは脅しを掛けることなく力ずくで言うことを聞かせた。  その方が、何十倍も屈辱的だと知っているから。 「うっ! くぅっ……」  そして、いきり立った佐藤のペニスは、根本を細い革製の紐でキツく戒められていた。  パンパンになった陰嚢を掴みそこをギュウギュウと揉み込むと、食いしばっていた唇が開き呻く声が漏れ出すが、そこに僅かに滲む色を見逃してなんてやるはずがない。

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