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「だいぶ弱ってる」
ベッドルームを後にした奈津がリビングへ入ると薫が声をかけてくる。
「そうだね。なにか考えないと」
和真の体調管理については飼い主である自分たちの責任だ。だから、それについては今夜話し合うことに決め、出勤するため奈津は部屋を後にした。
後ろ髪は引かれたが、今日は大切な会議がある。
和真が来てから一年が経過しようとしているが、こんなことは初めてだから、奈津は内心動揺していた。きっと、薫にしても同じだろう。
「早めに上がれればいいけど」
誰もいないエレベーターでポツリと呟き、奈津は何かを考えるように自身の顎へと指で触れた。
和真が食事をほとんど食べなくなったのは、一週間ほど前からだ。
もともと食は細かったけれど、それでも奈津や薫が与えれば素直に食べていたのだが、ここ数日は体が受けつけないといった様子になり、無理やり飲み込ませようとすれば嘔吐するようになってしまった。
熱も無く、それ以外はいつも通り従順だったものだから、夏バテなのかと思った二人は多少手加減をして抱いたが、和真の顔色は日に日に悪くなる一方で。
一度は二人で話し合い、食欲が戻るまではセックスを控え目にしようという結論に至ったけれど、それから二日が経過しても食べ物を拒否する姿に苛立ちが募ってしまい、昨晩は薫の制止を無視して激しく抱き潰した。
呆れたように見ていた薫も奈津が呼べば行為に混ざり、最終的には和真も満足したように見えたのだけれど。
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