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いちゃいちゃ
ちらっと洋介の様子を見る。相変わらず目を閉じて微動だにしない。
きっと疲れてるんやろな、と思い、起こすかどうか迷う。とりあえず下に行って、洋介の母親と話でもしようかとドアに向かって歩きだそうとしたその時。
「うわっ」
急に腕を後ろから掴まれてバランスを崩した。そのままぐっと強く引かれて体ごと後ろへと倒れた。ぼすっとベッドの上に仰向けに倒れたな、と自覚した時には洋介の両腕の中に綺麗に収まっていた。
そのままの状態で顔だけ振り向かせて尋ねる。
「起きてたん?」
「んー……さっき、目ぇ覚めた。お前がDVD見てニヤニヤしとったくらいから」
「……見てたんか」
「おはようのチューでもして起こしてくれるんかと思うたら、どっか行こうとするから。帰るんかと思うて」
「ちゃうねん。気持ちよさそうに寝とったから。起こしたら悪いかと思うて、下でおばちゃんと喋ってようかと思うてん」
「おかんと喋ったっておもろないやろ」
「おもろいで。洋介のおばちゃん、めっちゃ色々知ってるから」
「……知ってる言うても全部ゴシップやろ。芸能人とご近所の」
「それがおもろいねん。俺、そういうの疎いから」
「お前が興味あるんは動物と植物だけやからな」
「ちゃうよ。洋介もやで」
なんとはなしにそう言うと、洋介がぴたっと会話を止めた。ちょっと照れたような顔をして目を逸らす。
「お前、そういう恥ずいこと真顔で言うなや」
「恥ずくないやん。ほんまのことやん」
「やから……」
洋介が呆れたように亜貴を見た。それからふっと軽く笑う。
「ほんま、お前は変わらへんな」
「……洋介」
「ん?」
「好きやで」
じっと洋介を見つめてそう伝えると。洋介が少し驚いたような顔をしてから静かに微笑んだ。そのまま肩越しに顔を近づけてきた。自然と唇が重なる。
軽く押しつけ合って、啄むようなキスを続ける。そこから、そっと洋介の舌が亜貴の口内へと侵入してきた。
「ん……」
段々と呼吸と舌の動きが激しくなってきた。亜貴の体が少し熱を帯びてくる。亜貴を抱き締めていた洋介の手がそっと亜貴の体を滑り始める。服の上から優しく撫でられる内、亜貴はこのまま自然と進んでいくことを受け入れた。が。
亜貴の上を滑っていた洋介の手が唐突に止まった。それと同時に唇も離れていく。
少し距離を置いたまま見つめ合う。
「洋介……」
なんで?と続けようとした時。誰かが階段を上がってくる音が聞こえて、反射的にばっと離れた。床に素早く座り込んで、テーブルの上にあった洋介の本を手に取ると、適当にページを開いた。
その間に、洋介がベッドに再び寝転がって手の届く範囲にあった携帯を手にして弄るフリをする。
そのタイミングでコンコン、とノックの音がした。
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