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部屋で
太田の部屋はとても殺風景だった。入ってすぐ右側に台所があり、目の前に引き戸があって開けたままにされている。その向こうに6畳ほどの畳の部屋があった。
「どうぞ。コーヒー煎れるわ」
「あ、やけど……」
「わざわざ電車かなんかで来てくれたんやろ? ちょっと休んでいったらええやん」
「……おん……じゃあ……」
お邪魔します、と言って部屋へと上がった。そこで、手に持ったままだった花束を思い出し、太田に渡す。
「これ。斉藤さん言う人からやけど……」
太田はああ、と特に嬉しそうでもなく花束を受け取ると、ぽん、と台所のシンクにそのまま投げ入れた。その雑な扱いに亜貴は微かに不快感を覚えた。思わず抗議する。
「太田。人が心をこめて贈ってくれたもんやし、花やってちゃんと扱えばしばらくは頑張って生きてくれんねんで」
そう言いながら、シンクへと近付いて水を溜めた。丁寧に包装を取り、水分が行き渡るように配慮しながら花を溜めた水の中へと入れる。
太田は近くでその様子をじっと見ていた。
「花瓶がないんやったら、大きめのグラスでもええから。小分けにしてもええし、せっかくやから飾ってやってな」
にこっと笑顔を太田に向けると、太田は少し動揺した顔をして目を逸らした。そのまま湯を沸かし始める。
「……向こうで座っといて」
「ああ……おん」
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