101 / 191
炙り出し(6)
サリーナは1日と間を空けず、毎日薔薇の咲き誇る庭園へと足を向けた。
「『また』って何時 のことなのかしら。
期待する私が馬鹿なのかしら…」
エルグの笑顔と掛けられた言葉を思い出しては、サリーナはため息をついていた。
「サリーナ様、どうかされたのですか?」
毎日庭園に出掛けて行っては薔薇の花を抱えて、ため息をつきながら帰ってくるサリーナに、同じ侍従のシンディが声を掛けた。
「いいえ、何でもないの。気にしないで。」
「そうですか……それはそうとサリーナ様。」
シンディが声を潜めて話し掛けてきた。
「最近、頻繁にラジェ様の元に不審な男がやって来てますよね?
私、見覚えがあるんです。
確か、グルディ様のお屋敷に出入りをしていた男です。
あのひとは誰なんでしょう。何のためにここへ…
ラジェ様とグルディ様に、何の繋がりがおありなのか…」
「シンディ、滅多なことを口にしてはいけません。私達は余計な詮索をしてはいけない。
無闇矢鱈な好奇心は身を滅ぼします。
ここで見たこと、聞いたことは忘れなさい。
いいわね?」
「でもサリーナ様!
私達、追い出されるかもしれないんですよ!?
もっと若くてかわいい子達が私達の代わりにやってくる、ってラジェ様もそう仰ったし、世間の専らの噂です!
長年お仕えしてきた私達に対して、何と酷い仕打ちだと思いませんか!?
私は、もう我慢ができませんっ!
一体」
「しっ!黙って!」
サリーナは、白熱するシンディの言葉を遮った。
「シンディ、何処で誰が何を聞いているか分かりません。
あなたの不満や不安は尤もなこと。
でも、口に出してはいけない。
…何かが起ころうとしている…私達はそれを見極めなければ。
こんな時だからこそ冷静に。
いいわね?」
「…分かりました…」
サリーナは、泣きながら出て行ったシンディの背中をため息で送った。
何かが大きく動こうとしている。
何故かそれだけは確信があった。
ともだちにシェアしよう!