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炙り出し(11)

私室に戻ったラジェは笑いを抑えきれない。 「くっくっくっ……おい、ユウスル。 思いがけない幸運がやってきたぞ! あの年増でも役に立つとはな。置いてやった甲斐があったというものだ。 ははっ、そのお陰であのエルグを我が配下に置くことができるとはな。」 「…ラジェ様。最近言葉が乱暴過ぎますぞ。 口は災いの元。 もっと上品に、国王らしくなさっ」 「黙れ!俺に逆らうのか? いくらグルディの親族とはいえ、余計な口出しは無用! お前も、もうここに来るのを禁ずる。 グルディに申し伝えよ。 『俺の監視は必要ない』とな!」 「ラジェ様、何ということを…今までグルディ様がどれだけ心を砕き思いをかけてきたか…」 「どうせ俺を利用しようとしてたんだろ? それはお互い様だ! もう、俺ひとりで国を治めていける。 さぁ、帰ってグルディに伝えよ!」 天狗になったラジェは、グルディの監視役をとうとう追い出してしまった。 ユウスルは受けた仕打ちに悪態をつきながらグルディの館に戻ると、怒気を孕んだ口調で捲し立てた。 「グルディ様、はもう見限った方がよろしいかと。 勝手気ままなバカ殿だ! あんな奴に好き放題させておいてよいのですか!?」 「…まぁ、そう腹を立てるな。落ち着けユウスル。 は女侍従を全て解雇したのであろう?」 「ええ。今はサリーナを筆頭に全てエルグの館にいると聞いております。 それぞれに身の振り方が決まったそうで。 大慌てで次の世話役を求めているとか。」 「そうか。 ユウスル、縁者に年頃の娘がいたであろう。」 「はい。器量良しで縁談にも事欠かないそうです。」 「その者を呼び寄せて、奴に仕えさせろ。」 「は!?グルディ様、正気ですか!?」 「その娘が子を生めば、その子が次期国王になる。 世間を黙らせるには傍流とはいえ、やはり『正当な血筋』は必要だからな。 そうなったら奴は用済み…お払い箱だ。」 「成程…少し時間は掛かりますが、赤子には摂政が不可欠。 ルース様がいなくなれば、あの邪魔なガルーダ達も失脚するはず。 いよいよグルディ様の出番ですな。」 グルディは湧き上がる笑いを噛み殺していた。

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