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SS:我が心奪いし君〜ナルジの回想〜(6)
何という多幸感!
俺は何と果報者なのか!
この世の中の全ての幸せを一身に受けたような気持ちに満たされて………
「…ナルジ、ナルジ…こんな所で寝ては風邪を引きますよ…」
愛おしい夫 の声で、ゆっくりと現実に引き戻されていく。
あぁ……今のは…夢か……
「…あぁ、ガルーダ…すまない。いつの間にか寝てしまってたんだな。」
「お疲れならベッドへどうぞ。
それにしても…何か良い夢でも?ふふっ、あなた笑っていましたよ。」
「そうか?…ははっ、そうだ、うん、いい夢だった…昔、若かりし頃にプロポーズした時の夢を見ていたようだ…
はてさて、ルース様と霙様の仲睦まじい様子に当てられたかな。あのお2人の側にいると、どうも幸せな気分に満ち溢れてくるみたいで……ガルーダ、こっちにおいで。」
ガルーダは微笑んで頷くと、片付けの手を止めてナルジの側にやって来た。
その華奢な身体を横抱きにしてソファーに座り直すと、優しいキスを落とした。
「前から考えていたのだが……
2人の息子も独り立ちしたし、北の塔もしっかりした後継者が育った。もう後を任せても問題ない。
ルース様と霙様がいらっしゃれば、そのうち北の塔も必要なくなるかもしれんな。
龍の国が幸せに満ちれば、犯罪を犯す者などいなくなるだろう。
そろそろこちらに移動願いを出そうと思う。
そうすれば、毎日ガルーダと一緒にいられる。」
ガルーダは愛おしい夫にそっと身を寄せた。
「長かったですね、よくぞ大変な職務を全うなさいました…でも、これからはずっと一緒に…ふふっ…」
無骨な手がガルーダの髪を梳いていく。
「…美しい龍の国が益々美しさと優しさで満ち満ちていきますように…」
ナルジは、そう呟くガルーダの唇を愛情たっぷりに塞いでいく。
やがて2つの影は重なり合い、ひとつに溶けていくのだった。
了
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