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SS:我が心奪いし君〜ナルジの回想〜(5)
突然、とすん、と胸に何かが当たった。
驚いて下を向くと、緑色の柔らかな物体が自分の胸に縋り付いていた。
「ガルーダ様っ!?」
「…ナルジ様…お慕いしています…初めてお会いした時から…私が心に決めているのは…あなたです。」
小さな声で、しかしはっきりとガルーダが言った。
ナルジは固まっていた。
こんなことがあるのだろうか。
今、今、ガルーダは何と言った!?
“お慕いしている”
“初めてお会いした時から”
“心に決めているのは…あなた”
聞き間違いではないのか!?
幻聴!?幻覚!?あまりにガルーダのことを思い過ぎて、俺はおかしくなってしまったのか!?
自分がガルーダに釣り合うような男ではないのは重々承知だ。
でも今、確かにこの胸にいるのは、愛おしく思うガルーダだ。
ナルジは震える手でそっとガルーダの背中を抱き寄せた。
夢ならばこのまま冷めないでほしい。
夢ならばせめてこの温もりを暫し味わいたい。
ガルーダに触れる手が、可笑しい程にぶるぶると震えている。
こめかみがぎちぎちと脈打ち、最早どちらのものかは分からないが、激しい程の鼓動も全身に伝わってくる。
緊張と驚きの余り口内はカラカラで、それでも漸く口を開いた。
「ガルーダ様…私で、私なんかで良いのですか?
私は家柄も容姿も誇れる程のものではない、あなたに見合うような男ではないのですよ?」
「ずっと私のことを思って下さっていたのではないのですか?
届けて下さった花は意味がなかったのですか!?」
「愛しています!初めて会ったあの日から、ずっとずっとあなただけを思ってきました!
…何があっても私が守る!二度と辛い思いをさせないと誓います!
ガルーダ様、結婚して下さいっ!」
「はい、喜んで…」
二度と離すものかと、ありったけの思いを込めてガルーダを抱きしめた。
背中に回されたガルーダの手にも力が入り、抱きしめ返してくれる。
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