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第1話:井戸の底

家には昔から入っちゃダメだとか言われていた井戸がある。変な事に小さな小屋の中に井戸があり上にはベニヤ板の蓋がされていてその周りをぐるりと御札が貼られていた 本当はこの小屋自体入る事が禁止されていたけどその当時は兄とよく遊んでいた だいぶ古い小屋だったので相当ガタが来ていて裏の壁が腐って蹴ったら簡単に穴が空いた 僕らは秘密基地と名ずけよく両親に怒られた時はここに逃げ込んだもんだ ある日僕は兄と喧嘩した それはおやつのドーナツがみたいなとっても些細な事だったけどいつの間にかどっちが怖がらずに御札を剥せるかみたいな喧嘩になっていて 僕達は何重にも貼られた御札を全て剥がしてベニヤ板を持ち上げた 「ほらな!怖くねぇじゃん!!お前がビビりなんだよ!」 「僕だって怖くないもんね!」 そう言って井戸の縁に立つと急に風が吹いてバランスを崩した 兄はビックリしたのと同時に井戸に落ちかけている僕の手を必死に掴んだ 「うぐぐっ、な、なんか掴まれねぇのかよ!!」 「お、落ちる!兄ちゃん!落ちちゃうよ!!」 わんわん泣く僕に兄は大丈夫だから早くなんかに掴まれと声を絞り出して言った けれど急に兄の声が力みに変わった 「お、お前急に重く」 「に、兄ちゃん!僕何かに引っ張られてる!!助けて兄ちゃん!!」 泣きわめいてパニックになっていると急に体が軽くなった紫色の手が兄やその辺の物諸々を掴んで引きずり込んでしまった そう、僕達は井戸の底にに落ちたのだ あれからどのくらい経ったのだろう 目を擦りながら起き上がると見慣れない者達に囲まれていた 凄く低く気持ち悪い声で 人だ、子供だ、、食べちゃお食べちゃお なんて聴こえてくるもんだから ビックリして兄を探す 「に、兄ちゃん!兄ちゃん何処なの兄ちゃん!!」 兄を探してる、サガシテル?可哀想、カワイソウとケラケラ笑ってくる奴ら よく見ると足がなかったり目がひとつだったり よ、妖怪だ!!! 見れば辺りは提灯が灯っていて 不揃いの石畳の上に兄の靴が落ちていた すると何処かでやめろ!離せ!と兄の声が聞こえたその声を頼りに僕は走り出す 妖怪達は驚いた様に避けていく 「兄ちゃん!」 そう言って駆けつけた時には 兄の体は宙に浮いていた

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