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第2話:赤いキツネ
「ほぉ、お前こやつの弟か?」
僕はコクリと頷いた
なるほどなと呟いたキツネは
白い毛に薄い赤が入っている綺麗なキツネだった
と言っても全てがキツネなのではなく
人に耳やしっぽが生えているそんな感じで言葉も通じそうだ
奇妙だったのは火の玉がキツネの周りを浮遊している所で
その火の玉は僕に近付いたり遠のいたりまるで
何かを選別しているようだ
「お前達が井戸の御札を剥がしたことは知っているぞ?大人の言いつけはどうした?破ったのか?」
「ご、ごめんなさい」
「謝れば済む問題では無いのがまた何とも可哀想じゃの〜つまりもう元の世界へは戻してやれぬ」
宙に浮いたままの兄はじたばたして
嘘だ!返せ!!元の世界に帰せ!!と喚いた
すると赤いキツネはキッと兄を睨みつけ
五月蝿い餓鬼めと兄を自分に手繰り寄せた
そのまま顎を掴むと
「お前には少しきついお仕置が必要みたいだな」
そう言って紫色のどろりとした液体を口に突っ込んだ
その瞬間僕は誰かに視界を遮られた
兄の噎せる声が酷く苦しそうに聞こえて胸の辺りがチクリとした
すると後ろから多分僕の視界を遮った主であろう妖の声が聞こえた
「あいつも惨いことをする・・・お辞めなさい!まだ子供ですよ!」
「なぁにちょっと黙らせただけさ、直ぐに気持ちよくなるだろ?ほーれ大人になった気分はどうだ?」
「あぁ゛あ゛ぐぅ゛うああ!!!」
僕は目の前にある手を振り払うとそこには
18歳くらいの見た目をした兄?がいた
兄は苦しそうに悶えていて地面に這いつくばりながらキツネの服の裾を引っ張って
「な、何飲ませた糞狐!!!」
と鬼の形相で睨みつけていた
「ほーんお前良いのか?そんな事言ってて・・・どうせ儂に縋ることになるのに・・・そんな口の聞き方じゃぁ意地悪したくなっちゃうなー」
「はあ?何言ってやがる!!!」
「後は頼んだわ〜」
するとまた宙に浮いた兄はそのまま赤いキツネに連れ去られてしまった
さて、私たちも行きましょうか・・・
そう言って手を引かれた10歳の夏
10年経った今も下界に帰れないでいる
今思い出すと笑えるけどあの頃は本当に帰りたかったんだ
でもここの暮らしも悪くないと言えるほど馴染んだと自分でも思う
これは俺がこれから妖怪の街で狐や狸に振り回されながら生きてくハートフルストーリーなんだぜ?信じられないだろ・・・
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