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第9話 転生者(4)

 僕は串焼きを取り落としそうになる。  やっぱり、そうだったんだ。  この少年はレンだったんだ。 「レン……。レンなんだね……」  レンは、目を潤ませて自分を凝視する僕に、怪訝そうな顔をした。 「なんだ?もしかして向こうの世界の知り合いとか言うなよ、そんな偶然ウケるわ」  レンは茶化すように言う。僕は涙をこらえるのにただ必死だった。  レンにまた会えた。  大好きなレン。もう会えないかもしれないと思っていたレン。それが僕の目の前にいる。  僕の妙な様子に、レンは真面目な顔つきになった。レンはごくりと喉を鳴らした。 「おいまさか、本当に?お前、もしかして……」  僕は半泣きになって告げようとする。 「僕は、僕の名前は、よ……」  だがそこで、言葉を止めた。  さっき、この顔を可愛いと言ってもらえたことを思い出して。  もし本来の僕があの、陰気で醜い、皆から孤立してる依一(よるいち)だと知ったら、レンはどう思うんだろう。  失望されたらどうしよう、嫌そうな顔をされたらどうしよう。    想像したら悲しくなった。 「よ?」  レンが何故か、すごく期待を込めた瞳で僕を見つめる。一体誰を想像しているのだろう?  ああ無理だ、言えない。僕では間違いなく、残念がられる。 「ぼ、僕の名前は、よういちだ」  レンは拍子抜けしたような顔をした。 「よ、よういち?どのよういち?」  僕は咄嗟に適当な苗字を考える。 「えっと、な、中村よういち!」  レンは口をへの字にさせて、後頭部をかいた。 「知らねえな」 「う、うん、僕も、レンのことは知らない、今初めて聞いた名前」  レンは口をぽかんと開けた。そして一瞬の間をおいて、腹を抱えて笑い出した。 「えー!?なんだそれ、あー、すっかり騙された!お前、意外に面白いやつだな!演技力すげえ!うん、そうだな、あいつのわけないな、あいつこんなギャグかまさねえわ」  ギャグと思われたようだ。しかし「あいつ」って誰だろう。  僕はとりあえず謝る。 「ご、ごめん」 「いや、いい、久しぶりに笑えたよ。ずっとロクでもないことしかなかったから。久々に元の世界に戻れた気分だ。お前のことヨウって呼んでいいか?」 「う、うん!」 「ああやっぱりいいな、戻りてえなあっちに」

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