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第8話 転生者(3)
そうだ色々聞かないと、と思いながら僕は奥に行った少年に振り返った。
少年は、可愛い寝顔(死に顔)のもふもふの生き物の腹を、台所でかっさばいているところだった。
「そ、それうさぎ!?」
「ああ、血抜きはしてある」
血抜き!?って、なに!?
「えっ……と……」
「腹減っただろ?とりあえず肉でも食え」
「あり、がとう」
ワイルドだなあ。なんだか異世界ライフの実感が湧いて来た。
「あ、僕も手伝うよ!」
「じゃあ串に肉を刺していけ」
「分かった!」
20分ほどして、部屋の中にうさぎの串焼きのいい匂いが充満する。少年がかまどで焼いてくれた。あんな可愛い寝顔(死に顔)を拝見してしまった後だというのに、僕の食欲はそそられた。
「いただきます!」
僕は床に座って、手渡された串焼きを両手で持ってかぶりついた。美味しかった。少年も床に座り、機嫌良さそうに片手の串焼きを食いちぎって食べた。
なんか食べ方もワイルド感あるなあ。僕なんて歯で小さく噛み切って口の中でもぐもぐしている。
異世界生活が長いとワイルドになるのかな。
「君、いつ頃この世界にやって来たの?やっぱり青い光?」
「ああ、青い光だ。突然包まれて、気づいたらこの地獄だよ。来たのはいつだったかなあ、一年くらいは経ってんのかな」
一年前。青い光。
その時僕の心臓がドクンと鳴った。今更ながらあることに思い至って。
あの都市伝説めいた噂。レンは青い光に包まれて消えてしまった、っていう。
「ね、ねえ君の名前は?」
「悪りい、まだ言ってなかったなそういえば。俺の名前はレン。嵯峨 恋 だ」
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