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第7話 転生者(2)

 ギイという音を立てて扉が開いた。戸口にあの少年が立っていた。濡れたフード付きローブを着て、手に毛むくじゃらの何かをぶら下げて。 「起きたか」  言いながら少年は扉を閉めて、手にした何かを床に置いてローブを脱いだ。  ローブの中はノースリーブの黒いシャツとベージュのズボン。すらりとしているのにむき出しの二の腕には筋肉がついていて、かっこいい。 「あの、先ほどは助けてくれてありがとうございます!」  僕は立ち上がって深々と頭を下げた。 「敬語はやめてくれ、同じ転生者同士、仲良くやろうぜ」 「転生者同士?」 「ああ、俺も転生者だよ。日本から来た」 「ほんとですか!?僕も日本人です!」  僕は耳を疑った。無茶苦茶うれしかった。仲間がいた、しかも日本から来たなんて。同じ境遇の人がいたんだ、と感激した。  少年はちょっと怒ったような顔をして僕に近づくと、指で僕の顎をクイと上げた。  彼は僕よりずっと背が高いから、見上げる形になる。  僕は何か気を悪くさせてしまったのか、と不安に思う。 「敬語はダメ、つったろ」 「あ……。す、すみませ、じゃなかった、ごめん」 「よし」  少年は満足げに頷いた。でも僕の顎からまだ手を離してくれない。じっと僕の顔を観察するように見て。 「お前、その顔……」 「ど、どうしたの?」 「……いや、別に。可愛い顔してるなお前。ピンク似合ってるぜ」 「かっ、かわっ……」  僕は口をパクパクさせた。可愛い?僕が?  やっぱりこの顔は元の世界の僕とは全然違う顔なんだろう。  少年は駄目押しみたいにさらにこう言った。 「俺の好みだ」  そして僕の顎から指を離した。先ほど床に置いた毛むくじゃらの何かを手に取り、部屋の奥へと行く。  僕は顔を真っ赤にして硬直していた。  よかった、この顔に変身できてよかった、としみじみ思いながら。  最悪の異世界転生だけど、あの気持ち悪い顔を捨てることができたのだけは、よかった。  できれば身長も伸びて欲しかったけど。  あっちでチビだった僕は、こっちに来てもチビのようだ。

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