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第37話 ウェイブ村(1)
陽も傾き、原野が赤く染まり始めた頃、ようやく前方に村らしきものが見えてきた。
「今日はあそこで泊まるか」
「うん!」
僕らは村のそばまで来てウマから降りた。
村は木の柵に囲われていた。一応、人の背丈以上はある柵だけれど、街の立派な石壁に比べると見劣りしてしまう。
レンは、門の正面で槍を携えている門番に話しかけた。
「旅の者だ、宿をとりたい」
門番は警戒した様子で僕らをジロジロ見る。アイロウの街とは大違いだ。やはり小さい村ではよそ者に厳しいようだ。
ちゃんと付け耳もつけてるし、どう見ても現地人だよね?転生者だってバレないよね?僕はドキドキする。
「ここはウェイブ村だ。お前達は何者だ、どこから来た?」
「ただのハンターだよ。東のアイロウから来た」
「こんな田舎に何の用だ」
「この村に用はない。もっと西のミルドジャウ山目指してるんだ」
「ミルドジャウ?あと、なんだそのでかい獣は。そんなの村の中には入れられない」
門番はワン太を見やる。ライオンみたいに大きな、狼みたいな顔をした、銀色のフッサフサ長毛種犬を。
「見たことねえのか?フェンリルだよ。もちろんこいつはここら辺に置いておく。いい子で待ってんだぞ」
おすわり姿勢のワン太は元気にワオと答える。
そこで門番は驚いた顔をして、僕らとワン太を見比べた。
「フェンリルだと!?ガキのくせにフェンリルなんて手懐けてるのか!?そうかあんたらは転生者ハンターか、だからミルドジャウ山か、あそこは転生者が寄ってくる狩り場らしいからな」
僕とレンは顔を見合わせた。レンはため息交じりに肩をすくめる。
やっぱり待ち伏せだらけ、か。前途多難だ。
でも門番はすっかり僕たちを信用してくれたようだ。門の閂をあげて、開けてくれた。
フェンリルのブランド効果すごい。
「いいだろう、入れ。宿は村の南側、青い屋根の大きな建物だ」
僕はにこにこ笑ってお礼を言った。
「ありがとうございます!」
レンは無愛想に、ふうと息をついただけだった。
いろんな作物を植えた畑があちこちに開けていて、その合間に家々が立っている、本当に田舎の風景。
でものどかな感じでこれはこれで趣があるかも。
僕らは言われた通り、青い屋根の建物を探して見つけた。
真っ白な壁とアーチ型の窓が可愛らしい建物だった。
入り口にいた使用人ぽい人に宿泊者であることを告げてウマを預けた。中に入ると受付の女性が気さくに声をかけてくれた。
「お泊まりですか?」
「ああ、二人一泊だ」
「お二人で三千ブランになります。お二階の南側奥のお部屋をどうぞ。お食事をなさるのでしたら、一階に酒場がございますのでよろしかったらご利用ください」
「ああ」
レンは女性から鍵を受け取った。
僕は酒場と聞いてはしゃいでしまう。
二階に向かうレンと並んで歩きながら、
「酒場行こうよ、久しぶりに美味しいご飯食べたい!」
「俺の飯がまずいみたいに言うな」
「うっ!レ、レンのご飯も美味しいよっ。素材の味を生かしたワイルドさはバーベキュー感あって最高だ!」
「全然褒められてる感じしねえなあ」
「褒めてるってばっ」
「まあいいや、行こうぜ酒場。なんか情報得られるかもしれないからな」
「うんっ!」
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