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第42話 幻惑の森(3)※

 蜜のプールに沈んでいく感覚。  そこから滑り台のようなものを滑り落ちていく感触。  そして僕の体はどこかに投げ出された。  顔の蜜をぬぐいながら目を開ける。  青くて狭い部屋にいた。レンはいない、僕だけ。  部屋と言っても、ここも明らかに、花の内部構造だ。  この花の中の部屋は、床も壁も天井もびっしりと突起が生えていた。  青くて細くてやわらかい突起。青いイソギンチャクみたいな感じ。  参った、閉じ込められてしまったのだろうか?  とその時、来ていた服がほとんどどろどろに溶け落ちていることに気づいた。  うわ、もしかしてさっきの蜜は、服を溶かす酸が含まれていたのかな?  なんだかすごく嫌な予感がしてきた。  この花ってもしかしてあれ?  食人植物的なやつだったりする……?  背筋がぞっとしたとき、青い突起がにゅるにゅると伸び始めた。触手のように。  なになになになに!  もしかしてこの部屋は消化器官!?  そういえば腸の中もイソギンチャクみたいになってるんだっけ、腸絨毛とかいう!  お花さんもしかしてその青い触手で僕を消化するんですかー!?  触手はにゅるにゅる伸びて、僕の下半身に巻きついてきた。 「ひえっ」  触手はよりによって、僕のペニスに絡み付き、締め付けてきた。  まるで勃起を促すような動き。 「ふわあっ、や、やめてっ」  花が僕の言葉を解するわけもなく、花はその魅惑的な動きをやめてくれず、僕のペニスは硬くなってしまう。  なんで僕、花なんかに勃起させられてるんだ。     ていうかペニスから食べられちゃうの!?  うそでしょ、やだやめて、お願い!  と思ったら、触手は予想外の動きを見せた。  一本の触手が、僕のペニスの先端を探るように動き、そして、「口」を探り当てる。  おしっこの出る口。精液の出る口。  その口に、触手が侵入してきた。つまり、尿道に。 「っ!!」  ペニスの先からするすると触手が入りこむ、その凶暴な絵面。  絶対に痛そうで、でもなぜか痛みはなく、それでも僕は泣きそうになる。  当たり前だ、おかしいよ、嫌だよ怖いよ。    おののく僕に、突然強烈な快感が襲った。 「んぁあんっ!」  やっ、なにこれ。  そうだ尿道の先に前立腺があってそこを刺激すると快感を得られると聞いたことがあるけど、それか。  腰ががくがく痙攣するほどのとてつもない快感に僕は翻弄される。  精神的にはむちゃくちゃ気持ち悪いのに、体はむちゃくちゃ気持ちよくて。 「あんっ、ぁんっ、はぁあっんっ!」  触手にペニスの中に侵入され、変な声をあげてよがる僕。  なんだよこれ、なんでこんなとんでもないことになってるんだ。  とその時、何かが注がれる感触がした。  僕の体の中、尿道の奥のどこかに、何かが注がれた。  ぞっとした。  なに?  まるで強姦され中出しされたような感触。  ねえ、僕に何を注いだの?  やめてよ、いったい僕に何をしたの?  僕の目から涙があふれだした。  怖くて怖くて。  僕の中に何かを注ぎきった触手が、するすると尿道を戻っていく。  触手が僕のペニスから抜けた。  僕の体に絡み付いていた他の触手も、全て僕を解放して縮んでいく。  と、青い部屋の床が、突然開いた。  僕の体はがくん、とまた落下していく。  僕は絶望にうちひしがれながら、呆然と下へと落ちていった。

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