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第43話 幻惑の森(4)
柔らかい、羽毛のような感触の場所に僕は落ちた。
白い繊毛に覆われた、ベッドの上みたいなところ。
周囲は白い半透明の壁に覆われていて、出口は無い。今度はこの部屋に閉じ込められたのか。
天井を見上げた。僕が落下してきた穴が見える。
僕の見ている目の前で、僕の落ちてきた穴の隣に、もうひとつ穴があいた。
えっ?と思ったら、そこからレンが落ちて来た。
レンだ!
ぼふっ、と仰向けに落ちたレンに、僕は抱きついた。
レンも服が溶けおちてほとんど裸の状態。
僕はそのたくましい胸に顔をうずめて涙を流す。
「レン~~~~!僕どうしよう、変な青い触手におちんちんをレイプされたの中出しされたの!花に中出しされたんだうわああああああああん」
レンは僕の頭を撫でながら、
「お、落ち着けって……」
「もう駄目だ僕、これから僕の体どうなるの?怖いよ、うわああああああっ」
「大丈夫、そこまでやばいもんじゃない。俺もケツに中出しされたから、赤い触手に。今、お前の体の中に入ってるのはこの花の精細胞で、俺の中に入ってるのが卵細胞だ。あと媚薬な」
「……ん?は?」
僕は身を起こして、レンの顔を見下ろした。レンは参った、というように頭をかきながら、
「思い出したよ、この花。大型生物媒花だ。大型生物に受粉の手伝いさせる花。しかもすげえ強引なやり方で」
「え?え?」
理解できない僕にレンは言った。
「つまり俺達はミツバチなんだよ。花粉くっつけたミツバチ。で、受粉の手伝いを完遂したら、この部屋から出られる」
「受粉の手伝い?」
「ヨウはおしべで、俺がめしべ」
「僕がおし……べ?」
その時突然、急速に下半身に血流が集まっていく感覚がした。
僕は勃起していた。
そしてごくりと、僕の下に横たわるレンを見つめてしまう。
レンは頬を染めて、気まずそうに僕の猛りから目をそらした。
なんだこの感覚。
僕いま、すごく。
すごく。
……レンを犯したい気持ち。
そうか、そういうことか、と理解した。
僕とレンが今からセックスをしたら、僕達の体内に注がれたものが結合して、花の受精が成されるんだ。
だから僕達は今から、セックスをしなきゃいけないんだ。
レンがぼそりと呟いた。
「はあ、俺がめしべかよ……。逆だったら……」
僕はずきり、と胸に痛みを感じてしまう。
「レンは僕に入れられるの、嫌なの……?」
レンは焦った顔をする。
「ば、馬鹿、なに泣きそうな顔してんだよっ」
「だ、だって!僕は今すごくレンとしたいよっ。レンで童貞卒業したい!僕の処女も童貞も、全部レンに捧げたいんだ!僕、一生レン以外の人とセックスなんてしないもん、全部レンとだけしたいっ」
「うっ……」
レンが顔を赤らめて僕を見つめる。
手の甲を額にあてて、照れくさそうに微笑んだ。
「嫌なわけないだろ。言っただろ、俺、お前に攻められるの好きだって。ただちょっと……恥ずかしいだけ。俺だって今、むちゃくちゃ火照ってんだぜ?」
その照れた顔がすごく素敵で、僕の胸はトクンと鳴った。
僕達はしばらく、見つめあう。
僕が上で、彼が下。
うるさいくらいに心臓が高鳴っていた。
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