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第15話 そーしゃるでぃすたんす!
『ご報告申し上げます。
社会的距離推奨協会の規定により、ソーシャルディスタンス違反を犯した新種ウィルスの陰性者四名に対し、特別陰圧室での隔離を行いました。このうち二名はアルファとオメガであり、二週間の経過観察を経て、二度の再検査を受けさせたところ、双方とも陰性の結果が出たので、無事に特別陰圧室での隔離を終えております。
残りの二名はベータでしたが、これについても上記の確認ののち、陰性との結果が出たので隔離を終えることとなりました。
上記のアルファとオメガ、及びベータ二名の計四名は「愛の巣」A307号室にて婚姻中でしたので、それぞれアルファとオメガで一室、ベータ二名で一室の、計二室の特別陰圧室に隔離の上、経過観察を行いましたが、約七十二時間が経過したところで、オメガの欲情が表面化し、支給物のインカムにて隣室のアルファを誘惑。ガラス越しに疑似性交に至る様子が確認されました。
アルファとオメガの二名は無事に疑似性交を成功させ、翌日の血液検査の結果、双方ともに耐性値の上昇が確認されました。なお、アルファに於いては疑似性交ののちに、新種ウィルスに対する抗体の出現も確認されました。
別棟の特別陰圧室に隔離したベータ二名も同じ頃にガラス越しでの疑似性交が確認されており、翌日の検査で同じく耐性値の上昇、及び抗体の存在を確認いたしました。
このことから、婚姻中のパートナーとの疑似性交の有無と、新種ウィルスに対する耐性値と抗体生成の過程には、何らかの因果関係がある可能性があると考えられます。今後、彼らと似た事例が出現した場合、各担当者が疑似性交を促す何らかの働きかけをすることで、新種ウィルスへの抵抗値の底上げ、及び抗体生成を試みることができると予測されます。
従いまして、担当者の対つがい疑似性交促進行動に一定のマニュアルの整備をし、広く研修を徹底することを進言いたします。
また、これらのアクションを取ることを、社会的距離推奨協議会の規定に盛り込むことを提案するとともに、新種ウィルス撲滅への重要なプロセスの生成に、今後も邁進する所存です。
なお、上述したアルファとオメガ、及びベータ二名には、無断で特別陰圧室を汚した罰として、翌朝、ガラス掃除をさせました。
報告は以上です』
=終=
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