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第5話

 焼き肉店に入り、生ビールをジョッキ2杯干したところで、翼はようやく陽気になってきた。  よく食べ、よく喋り、よく笑うようになっていた。  そこを見計らって、和哉は話の流れに沿って訊いてみた。 「だけど最近、峰松くんは少しおかしいよ?」 「そうですかぁ? 僕はいつもおかしいと思いますけど?」 「茶化すなよ。勤務中、ぼんやりしてること、あるよ」  は、と翼は口元に持って行った箸を止めた。 「そう、ですか」 「何か、あったの?」 「いえ、別に……」  それ以上は何も語らず、翼は箸をおいた。 「無理して訊こうとは思わないけど、よかったら力になりたいんだ」  和哉の言葉に、翼は顔を上げた。 (渡さん、それで僕を誘ってくれたんだ)  朝、コーヒーを淹れてくれたこと。  保冷剤をハンカチに包んで、渡してくれたこと。  雨の中、傘に入れてくれたこと。  彼の優しさが、今の僕にはひどく身に染みる。  黙ってしまった翼に、和哉は明るく話しかけた。 「よし! じゃあ、次はカラオケ! 思いきり歌うぞ~」  遠慮する翼の腕を引き、和哉は立ち上がった。

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