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第6話

 外へ出ると、まだ雨が降っていた。  再び小さな折り畳み傘に二人で入ると、濡れた歩道を歩き始めた。 「この分だと、朝までやみそうも無いな」 「そうですね」  返事をしながら、翼は考えていた。  僕の心の雨は、いつかやむときが来るのかな。  もう、永遠にやまない土砂降りのような気がする。  でも、渡さんと一緒にいると、心が安らぐ。  胸の傷が、癒えてゆく。  社内で、男女を問わず人気がある渡主任。  そんな彼を、今独り占めできている小さな喜びが、翼に芽生えていた。 「渡さんは、早く帰らなくてもいいんですか? 誰か待ってる人とか、いないんですか?」 「いないよ。一人暮らしだし、結婚する気も無いし。あ、待てよ。いるぞ、待ってる子が」 「誰ですか?」 「文鳥の、ピピちゃん」 「可愛い!」  そんな話をする余裕が、ようやく翼に現れた。  そんな彼を連れて、和哉はカラオケボックスへ入って行った。

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