3 / 3

第3話 side 雪路

 家に帰ってからも、ドキドキが止まらなくて、さっきまで触れていた唇が熱く、まだ触れ合っている感覚がしている。熱を持ってはれた唇を指先でなぞった。  今日を逃したら、もう二度と彼に触れられないと、わかっていた。だから、記憶に焼き付けるように、最後のキスをした。  しめった下着が肌に張り付いて、気持ちが悪い。ひとつため息を吐き、解こうと思っていたテキストをしまい、引き出しの中から便せんを取り出した。  何度も瞬きを繰り返しながら、窓の外を見る。  あの場で、降り続く雨と一緒に想いも溶かしてしまえば、こんなに胸が苦しくてつらい思いをしなくて済んだのに……。  号泣するように降り続く雨音をBGMに、筆を執った。

ともだちにシェアしよう!