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第120話

千尋と近くのファミレスに入ると禁煙席に通された。 「あれ?千尋煙草吸ってなかったっけ?」 俺が聞くと千尋はちょっと気まずそうな顔をして、 「実はこの間愁と喧嘩してさ、許してもらうために1ヶ月禁煙中なんだよ。」 ハハッと笑いながらそう言った。 「相変わらず仲いいんだね!今日愁くんは?」 「今日は仕事。」 何でも愁くんの仕事はレストランの店員さんらしい。愁くん人懐っこいところあるから人気なんだろうな そんな話をしているうちに注文した物が届いてちょっと遅めの昼食を食べた。 「蒼には言ってねえんだろ?」 「うん。びっくりさせようと思って」 「そうか。」 あっちに居ても連絡は取ってたけど実際会うとなると緊張する。 千尋を見ると悪戯っぽい顔をしていた。 「じゃあ早く行ってやれ。特別に昼から休みにしてやったよ!」 「ほ、本当!?」 「ああ、だからそれ食ったら今すぐ行け!」 「うん!」 それから俺は急いだ残っていたご飯を食べて奢ってくれると言ってくれた千尋にお礼を言って店を出た。 蒼の家の最寄りは今いる所から一駅行ったところにある。駅からは自然と歩調が速くなる。どんな顔をしたらいいのかとか何を話したらいいのか分からないけど今は1秒でも早く蒼に会いたかった。 そう思ってたのにやっぱり玄関の前に来てみるとどうしたらいいのか分からない。合鍵は持ってる。それを使うべきなのか?それともインターホンを押すべきなのか? 俺は迷いに迷ってインターホンを押した。 『はい。』 「あ、俺です。」 蒼に会えると思うと緊張して咄嗟に言葉が出た。俺の答えに対しての蒼の返事はない、その事に不安がます。 てか、俺です。ってなんだよ、 はぁ、何やってんだろ俺…。 落ち込んで居ると鍵が開く音がしてドアが開く。スローモーションに見える。ゆっくりゆっくりドアが開いた。 少し俯いていた俺に蒼の腰当たりが見えて顔が見えない。恐る恐る顔を上がると蒼と目が合う。 「えっと……久しぶり?」 俺がそう言うと蒼の目が見る見る開いて驚いた顔になる。 「…春野か?本当に」 「うん。そうだよ」 俺がそう答えると蒼はそのまま黙ってしまった。 「蒼?」と呼ぼうとした時いきなり前に引っ張られて体制を崩し蒼の胸に引き込まれる。 「春野……」 視界が暗くなり耳元で蒼の声が聞こえる。ここでやっと蒼に抱きしめられていると分かった。 ああ……蒼だ。 蒼の匂い、蒼の感触、蒼の声。 俺がこの4年間ずっと欲していたもの…。

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