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第1話
重い体を引きずってベッドから這い出る。
ふとカレンダーに目をやって春 は盛大に溜息をついた。
ちょうど一週間が経過している。
バイト上がりに体の異変を感じ急いで自宅に逃げるように帰って、店長に明日からしばらく休ませて欲しいとLINEしてからの記憶ははっきり言って曖昧だ。
ようやく取り戻せた冷静な思考力で、春は改めて己の浅ましさに吐き気を覚えた。
Ω性。
この世に存在する性別の中で、一番忌み嫌われるΩ性の男性。
それが今カレンダーの前でうなだれる春の持つ性別だった。
もう一度、大きく溜息をつく。
とりあえず厄介な発情期は抜けたようだ。
「あ、ヤバ。店長に連絡・・・」
すでに電源の切れたスマホを充電器に繋ぎ、明日からのシフトに入れてもらえるかお願いをしなければならない。
Ω性は思春期になると2〜3ヶ月に一度、強力な性衝動に駆られる発情期に人格をも支配される。
つまりその度に人としての理性は著しく低下してしまうため、一般的な社会生活はなかなか難しく世間からも偏見の目を向けられることが多かった。Ωだからって理由で就職できないという話もよく聞く。
例外からもれることなく春もそうだった。
高校は卒業したが進学することも就職することも叶わず、今はバイトでなんとか生計をたてている。
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