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第1話
振り上げた拳の先の瞳に映る自分が酷く醜く歪んで見えた。
ああ、これが今のオレなんだ……と思うとどうしようもない情けなさが込み上げてきて、現実から逃げ出したくてその瞳を閉じる為にまた拳を振り上げた。
そうすればそうするほど圭吾の気持ちが今の恋人であるオレにではなく、心の中にいるあいつに向くのを分かっていたのに。
けれど、顔を腫らした圭吾がオレを許してくれる瞬間、あの瞬間だけは圭吾の気持ちがこちらに向いているような気がして……
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