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第25話
「 にっがーい」
「素直に飲まないからだろ」
唇の感触に、かぁっと赤くなった顔を見られたくなくてコップを渡して立ち上がる。
皿を洗う振りに誤魔化して背を向けると、極力平静を保った言葉を絞り出す。
「飲んだら寝ろよ」
「風呂入りたい」
「はぁ!?」
「だって昨日も入れてないし」
至極当然の主張だったが、なぜ計都が言うと非常識に聞こえるのかが不思議だった。
「ね?」
首を傾げて強請る姿は餌を強請る猫のソレに似ている気がする。
ベッドに座らせ、その傍らで湯に浸したタオルを絞る。
「シャワーが良かったな……」
「拭くだけで勘弁してくれ」
不貞腐れる顔を拭き、喉を拭く。
「んー!気持ちイイ!」
「ほら、手を出せ」
着替えさせておいたバスローブから腕を抜き、日に焼けてない白い腕を拭く。
はっとするようなコントラストを見せる胸の赤と白い肌も無心で拭き、背中を拭き、足も拭いていく。
背中、手首、足、服に隠されて気づかなかった箇所に散らばる傷跡に、言葉が出ずに唇を引き結んだ。
傷跡の皮膚の薄いところは極力擦らないようにしたが、痛みは出なかったかが気にかかるが……
「 ほら、ソコぐらいは自分でやれよ」
そう言って絞り直したタオルを渡すと、計都は左手で渋々と受け取る。
「拭けたら呼べ。着替えさせてやるから」
そう言って湯の入ったバケツを持って扉に向かおうとするオレの背中に声が掛けられた。
「テンチョ」
「……」
「テンチョ」
なんだと言って振り向きたかったが、何故だか嫌な予感しかしない。
いや、嫌な予感と言うよりは……
浅ましい、期待……
そう……期待だ……
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