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第24話

 腕を三角巾で吊るした計都を見た壱が、何かを含ませたような笑みでクスリと笑った。   「恭司さん、激しすぎ」 「何がだ」 「ナニが」  ぷくく と笑いながら看板を運ぼうとして、はたと手を止める。 「え?じゃあシマキ君はやっぱり使い物にならないってことですか?」 「オレがその分動くよ」 「まぁそうですよね」  きっぱりと言い切り、壱は扉の方へと姿を消した。 「テンチョ。俺何しましょ?」 「……」  両手でも何もできなかった人間が、片手が不自由になって器用になる訳がない。 「座っといて」 「ハーイ」  こう言う時だけいい返事をしてカウンターのスツールに座り、ぶらぶらと足を遊ばせる。  そんな姿を見ながら、オレは開店準備に取り掛かった。  結局ずっと椅子に座っているだけだった計都を連れて家に戻り、食事の支度をする。 「テンチョ。あーん」  くらりと眩暈がするが、右手が使えないのはオレのせいだと言い聞かせて箸で食べ物を運んで食べさせる。  飲み込むのが早いような気がするからよく噛むように注意してから、食べやすい位の一口分を口に入れる作業は、計都が文句を言わなければ存外楽しい作業だった。 「明日からは、スプーンで食べれるものにするからな」 「ひゃだぁ」 「口に物入れて喋るな」 「やぁだ。テンチョがあーんしてよ」  そう子供じみた発言に、いちいち相手をしていたら身が持たないぞと自分に言い聞かせながら、薬の用意もする。 「薬やだー」 「飲め。我儘言うな」  膨れて尖らしたその唇に錠剤を押し込むと、柔らかなその感触が指先に触れた。

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