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第20話 久しぶりの学校
ガラガラと教室のドアを開けると、青木君が束さず、
「要~、お前学校始まったばかりでラッキー、あ、いや、散々だったな。」といつもだったら遅刻ギリギリの青木君が、早くも学校に登校していた。
僕は「おはようございます。今日は早いんですね。」と青木君に挨拶すると、
「あ~朝練が始まってるんだよ。まだ1時間目も始まってないのに腹減って、腹減って。」とカバンの中からパンを取り出してかぶりついている。
「先生が来られたら怒られますよ。」と助言してあげると、
「大丈夫、大丈夫。もう見つかってるし、先週はずっとこうだったが、先公も、もう怒る事、諦めたみたいだな」と言ってガハハと笑っていた。
スポーツクラブに参加している人の間では良くあるようなので、先生達も大目にみているようだ。
パンをかじりながら、「何?インフルだったのか?」と聞いてきたので、
「いえ、体調を崩してしまって、中々調整できなかったんです。」と答えた。
「まあ、春先は気候もポンポン変わるしな、要なんて貧弱そうだし…もう調子は良いのか?」と青木君が聞いてきたので、
「はい、すっかり。僕は貧弱ではありませんが、ありがとうございます。」とお礼を言った。
「な、俺とお前、同級だし、それに少なくとも俺はダチだと思ってるからさ、そんなかしこまった言葉使わなくっても良いぞ。クラスの女子なんて俺の事サルだの、ノッポだの呼び放題だぞ?」と笑って言ってくれた。
青木君はバレーボールをやっていると言うだけあって、身長は結構高い。
ルックスも、真面目にしていると悪くない。
「そうだね。じゃ遠慮なく! でも、青木君は僕を友達だと思ってくれてるんだね。凄く嬉しい。ありがとう。」
「なんだ、お前は思ってくれてないの? お前はボッチなのか?」
「ボッチと言う訳では無いけど、あんまり人との交流とかなかったから…どう接して良いかよくわからなくて…」
そう言いながら席に付き、教科書などを机にしまい込んでいると、
「俺には遠慮するなって! 何でもポンポン言っていいんだぞ。しかしお前、一週間病気で休みだったのに、なんか色っぽくなったな?」と大木君が耳打ちしてきた。
「えっ?何か違いますか?」とドギマギして聞くと、
「なんか、更に可愛くなったような…?」と言う大木君に僕は
「可愛いなんて、男に言う誉め言葉じゃないよ!」と言うと、彼は笑って、
「だって、お前にぴったりな表現って、他にないぞ?」とからかった様に答えた。
「いやーほんと、髪とか、艶が一層出たような…それに頬もなんかピンク………いや、別に女の子みたいと言ってるわけじゃないぞ。ただ、男にしては奇麗だなと…なんでお前、男なんだろうな?女の子だったら、俺、速攻でお前にアタックしてるな!」そう言って笑っていた。
僕は「本当にもう!」と少し照れたように言って教科書を机にしまい込み、カバンを机の横に掛けた。
僕はあれから一週間も学校を休んでしまった。
幸い薬は効いてくれたが、副作用が少しきつかったから。
病院の先生は直に慣れてくるとは言ってくれだが、少し不安は残る。
でもこの一週間の間、矢野先輩は毎日お見舞いに来てくれた。
そして僕は嫌でも先輩の気持を再確認するしかなかった。
そして、先輩に対する自分の気持ちも…
「そう言えばさ、お前が休んでいる間にクラス委員が決まってさ、俺、体育委員。おまえは…」
「僕、何か委員になった?」
青木君はうつ向いて、「おまえは学級委員長だ。すまん、助けてやれなかった。」そういって僕の肩に手をポンと置いた。
丁度そこを通た女子がその会話を聞いて、「は~?なに言ってんのサル!あんたが赤城君を推薦したんでしょ!」と青木君を睨んでいる。
僕は「えっ?えっ?どういう事?」と言ってオロオロとしてると、
「こいつ、早くクラブに行きたいもんだから、誰もなりての無かった委員長、あなたに押し付けちゃったのよ。」と言って教えてくれた。
そこで青木君は、「てへっ♥バレちゃった。」と全然悪気もなくそう言った。
僕は余りものその毒気のなさに、「ハハハもう良いよ。休んじゃってた僕も悪いんだし」と言って、その状況を受け入れることにした。
「でも俺、最初の委員会お前の為に行ってあげたんだそ。お前休んでたからな。次は何時だったかな?」という青木君に、奥野さんが束さず、
「あなた、参加したけど、どうせ寝てたんでしょ?」と言った。
そして青木君は「あっ、バレた?」と舌を出して笑っている。
僕は「ハハハ青木君らしくって、目に浮かぶよ」と笑うと、
「あなたって、良い人ね。初日の自己紹介忘れちゃったろうからもう一度、自己紹介ね。私、奥野瞳。一年間よろしくね。」そう言って握手してくれた。
「あ、ありがとう。僕は…」と言いかけると、
「赤城要!」と僕の名前を憶えていてくれた。
「あ、僕の名前、覚えてくれてたんですね。ありがとう、これから一年間宜しく。」と言うと、
奥野さんは、「そりゃ、覚えるわよ。ま、あなたって、良くも、悪くも目立つしね。」と返した。
僕は訳が分からず、「え?どういう意味ですか?」と聞くと、
「あなた、結構奇麗な顔してるのよ。誰にも言われた事無い?」と奥野さんが尋ねてきた。
「えっ、取り分けそう言うことは余り…あ、青木君は何時もからかってますけど…」と言うと、
「あなた、自分の事、自覚ないのね。」と言った後続いて、
「実はね、あなたの事、あなたが休んでる間、奇麗な子が入学してきたってちょっと噂になっててね、結構上級生のそれも男・子が、どの子?って見に来たのよ。その上、あの矢野先輩が直々に会いに来たじゃない?そりゃあもう、矢野先輩のお気に入りは誰?って女子も入れ替わり、立ち代わりでね。あなたずっと休んでたから、皆、あなたの事、探すの諦めたみたいだけど…」とびっくりするような情報を教えてくれた。
「そうだったよな! おれ、ドアの所だからもう、毎日、毎日、煩い、煩い…」青木君もそう言って霹靂としている。
奥野さんが矢野先輩を知っていたことが意外で、「奥野さん、矢野先輩の事知ってるの?」と尋ねたら、
「あなた知らないの?彼ってスッゴイモテるのよ。入学して直ぐに噂が回って来たわよ!αであの顔でしょ?それに父親が芸能関係となれば、我、取り入ろうという女子も多いし!それにスッゴイお金持ちじゃない?」と奥野さんもうっとりしながら話してくれる。
「えーっ全然知らなかったよ。先輩がそんなにモテるなんて。」とびっくりすると、
「その上さ、生徒会長もかなりのイケメンで、お金持ちで、実家が権力持ちらしいから、その二人を追ってかなりの女子が受験して、去年と今年はかなりの倍率が女子にはあったみたい。ここだけの話だけど、あくまでも噂よ、なんでも、会長には婚約者居るみたいなの皆知ってて、それでも構わないっていう輩は多いみたいよ。」と教えてくれた。
「へー奥野さん、物知りだね。」と青木君の方をチラッと見ると、「ま、大体は当たってるな。女子の情報網は凄いな」と言って呆れかえっていた。
そして青木君は一言、「あ~その中の女子の一人でも良いから俺に気付いてくれないかな~」とポツリと言った。
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